福島のニュース
2020(令和2)年度に内閣府が行った少子化社会に対する各国の意識の違いを把握する調査によると、自国が子どもを産み育てやすいと思うかとの問いに対し、「そう思わない」とした国民は61・1%に上った。子育て支援策が進んでいる欧州の国民に同じ質問をしたところ、スウェーデンの2・1%などと大きな差があった。子育て世帯の休暇や所得の保障、共助の仕組みなどに満足している割合も欧州に比べて低いとの結果も示され、日本の少子化対策が不十分との裏付けにもなった。では、福島県は子どもを「育てやすい」地域なのか。子育てを巡る実情と課題を探った。
保育関係の仕事に携わっていた会津地方の女性(32)は今月、2人目の出産を控える。今は新しい家族との出会いが待ち遠しい。わが子を持つ喜びは何物にも代え難いが、「3人目も、となると、ちょっとためらってしまうかもしれない」と率直な思いを口にする。
短大卒業後、2020年に結婚した。自身は3人きょうだいで、兄と妹に囲まれ育った。自分も3人の子どもを持つのが理想だと考えていた。
しかし、長女が生まれて考えが変わった。午前8時30分から午後5時ごろまで働きながら、幼稚園への送り迎えや早めの寝かしつけなどに追われた。夫の実家から子育ての支援を受けているが、常にお願いできるわけでなく、プライベートな時間はほとんどない。「仕事だけしていた時期が一番楽だった」。余裕がなくなり、娘に厳しい言葉をぶつけてしまうこともあった。
2人目の妊娠が分かった後の3月に仕事を辞めることになった。負担を考えて当初は職場の産休・育休を利用するつもりだったが、新年度は雇用契約の更新がかなわなかったためだ。勤務先から理由は明かされなかったが「長期の休みを取られては困ると思われたのではないか」との疑念は消えない。■育児支える職場環境を
県は昨年、県内の20代から40代の男女5千人に結婚・子育てに関する調査を行った。国が「多子世帯」として大学無償化などの対象とする「3人以上」の子どもを持つことについて「理想」とする夫婦は45・9%と半数近くを占める。しかし、実際に予定している夫婦は26・5%にとどまるなど、理想と現実のギャップが浮き彫りになった。
主な理由のうち、「働きながら子育てができる職場環境がない」が21・6%となったのをはじめ、「自分の仕事(勤めや家業)に差し支える」が14・9%、「雇用が安定しない」が9・7%になるなど雇用環境への不満を挙げる回答が目立った。
女性は第2子が1歳になってから新たな職を探す計画だが、「この年で新たなスキルを一から身に付けるとなると、正直厳しいと感じる」と不安を隠せない。
仕事をしながらではわが子たちに注げる時間が減る。それでも働かなければ収入が安定しない。ジレンマの中で、3人の子どもを持つというかつての理想は今や夢物語のようなものだ。
国や県は少子化対策に力を入れているというが、その恩恵はさほど実感できていない。「もっと多様な働き方ができる環境を整えてほしい」と願う。