少子化を生きる ふくしまの未来 第6部「育てやすさ」(2) 育児休業 男性取得、企業間で差 小規模ほど難しく

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少子化を生きる ふくしまの未来 第6部「育てやすさ」(2) 育児休業 男性取得、企業間で差 小規模ほど難しく

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政府は2023(令和5)年、岸田政権下で「異次元の少子化対策」に踏み切った。柱の一つが、男性の育児休業取得の推進で改正育児・介護休業法に基づく制度導入を進めた。厚生労働省のまとめでは、夫の休日の家事・育児時間が第2子以降の出生に密接に関係しているとされる。夫が携わる時間が「ない」とした世帯よりも「1日6時間以上」とした世帯の方が2人以上の子どもを持つ割合が8倍以上高いなどの統計結果が根拠となっている。
県内には先駆的企業がある。いわき市の福浜大一建設。2016(平成28)年から男性社員10人が取得し、育休取得率100%を達成している。「子育てに強い思いを持つ若い人たちは増えている。応えるための制度の充実や会社の理解が必要と感じた」。取締役執行役員総務部長の遠藤順一さん(58)は「今や社内で男性社員の育休取得は『当たり前』」と胸を張る。
少子化などに伴う人手不足が続く中、「家庭の事情への配慮が人材の確保には欠かせない」と考えたのが取り組みのきっかけだった。
だが、男性の従業員数は92人で、20~40代の働き盛りが多い。当初は周囲への負担やキャリアへの影響などから取得をためらう社員も多かったという。打開に向けて育休を取りたい時期について本人との話し合いの場を設定しながら綿密に調整。部署内でも事前に相談して仕事の分担、引き継ぎなどを計画的に行う仕組みをつくった。DX化による業務の効率化と併せて、役員と現場の部門長らが従業員と面談するなどコミュニケーションを欠かさないよう配慮した。
取得した社員からは「生まれた直後など大変な時期に家族と過ごせてよかった」との声も上がる。現在の平均取得期間は16・5日だが、さらなる長期化の実現が課題だ。遠藤さんは「男性社員の育児意欲も向上している」と効果を分析する。拡大に向けては「行政主導で社会全体に周知する機会がさらに必要ではないか」と求めている。
一方、県内で男性の育休取得の普及は道半ばだ。県の調査では人員が少ない企業ほど取得者の割合が少ない傾向にある。社員数が30~99人の企業が36・4%だったのに対し、千人以上は48・7%と半数近くに達している。人手が少ない事業者ほど「休業することで周囲に迷惑をかけそう」「繁忙期などと重なり、取れる雰囲気ではない」などの悩みを抱えている。
「これまで社内で取得実績はまだない。世の中の流れに反しているのは分かっているのだが…」。福島市にある建設会社の60代の経営者男性は育休の浸透が思うように進まない現状を語った。
勤務環境を改善しようと、数年前に制度を導入した。従業員30人で主に建築の仕事を請け負っており、公共の建物だけでなく工期の要望が厳しい民間の住宅の現場も多く抱える。業績は好調な半面、現場作業員だけでなく、営業を担う社員も業務量が大きく増している。「1人でも抜ければ仕事は回らない」と同僚らの負担が増すことに気を使うなど人手不足が育休取得を阻む壁になっている。男性は「働き手が足りていない状況では会社としても『ぜひ取ってくれ』と強く勧められない」と話し、法制化だけでは後押しにならない小規模事業者の課題を指摘した。