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いわき信用組合(本部・福島県いわき市小名浜)による迂回[うかい]融資問題を巡り、信組が本人に無断で一般預金者の名義を使って別の口座を作り、これらの口座から迂回融資する形で資金を流用していた。19日、信組が取材に明らかにした。昨年11月に問題を公表した際は不正の概要について「大口融資先や信組の役員、その家族・親族らへの融資を装った」などと説明していたが、双方に無関係の預金者も巻き込まれていた可能性が浮上した。
信組は昨年11月の公表時には、旧経営陣が業績の悪化した大口融資先の企業への資金繰り支援を目的に個人への貸し出しを装って迂回融資を行った―などと説明。時期は2008(平成20)年7月~2011年2月、総額は10億円を超えるとの見通しを示した上で、弁護士や公認会計士らによる第三者委員会を設置し、全容解明や再発防止を急ぐとしていた。
この段階では、迂回融資の受け皿に一般預金者の口座が含まれることには触れていなかった。信組の担当者は「第三者委による調査が始まるところだったので中立・公平性を保つため明確に伝えられなかった」などと説明している。偽造した口座の数や不正融資の総額、期間、詳しい手法などは調査が継続中であることを理由に明らかにしていない。近く記者会見し、結果を公表するとしている。
信組によると、昨年秋に問題が表面化した後に一部の組合員が融資に関する証拠保全を地裁いわき支部に申し立てた。同支部は今年2月に申し立てを認め、信組本店に立ち入り調査を実施。関連する書類を証拠として保全する手続きを取ったという。
信組によると、2008年7月ごろ、当時最大の融資先だったいわき市の企業の業績が悪化。旧経営陣が破綻を防ぐために迂回融資を始めた。融資は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で企業が一時休業するまで続いたが、公表されなかった。昨年10月、上部団体の全国信用協同組合連合会(全信組連)から「X(旧ツイッター)にいわき信組の不正隠[いん]蔽[ぺい]を指摘する投稿がある」と照会があり、内部調査で投稿内容がおおむね事実と判明した。
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全国信用協同組合連合会(全信組連)の担当者は預金者の名義を無断使用して口座を作り、資金を融資する行為について「金融機関としてあってはならないこと。非常に特異なケースだ」との認識を示した。
いわき信用組合は東日本大震災による被災を受けて2012年1月、金融庁と全信組連から200億円の公的資金注入を受けた。今年3月、財務基盤の強化などを目的に全信組連から50億円の支援を受けている。
全信組連の担当者は「第三者委の調査結果を待っている段階。いわき信組が健全な経営体制となるようサポートする」と話した。