福島のニュース
「学校はどうだった?」「ご飯はおいしい?」。福島県郡山市富田東にあるNPO法人makana(マカナ)が運営する放課後児童クラブでは夜になると夕飯を用意する支援員と児童のやり取りの声が響く。
フルタイムで働く夫婦の世帯やひとり親からの「子どもを預ける場所がない」「夜まで一人で留守番はさせられない」との切実な声を受け、2022(令和4)年に設立した。定員40人の施設は常に満員の状態が続く。申し込みはひっきりなしだ。4月から現在の場所に移って定員を20人増やしたが、すぐに埋まった。代表理事の緑川浩[ひろ]郎[お]さん(51)は「預け先の需要は急速に高まっていると感じる。育児しやすい環境づくりの受け皿拡大が必要ではないか」と提起する。■運営側は状況ひっ迫
核家族化や共働きの定着、母子家庭、不登校児童の増加―。働き方や家族の在り方が多様化する中、子どもが安心して過ごせる受け入れ先づくりが少子化対策の面で重要性を増している。県内では放課後児童クラブは昨年5月時点で491カ所と、10年間で100カ所ほど増えた。子ども食堂などは子どもの体験や学習を支える場所としても重要となっており、現在で子ども・若者の居場所は約190カ所と県内の中学校数に追い付こうとしている。
ただ、施設や組織の増加に合わせ、スタッフの確保や運営面の課題も出ている。専門人材やボランティアの育成が間に合わないのに加え、業務の内容の周知なども追い付かず、県内の自治体からは「手を挙げる人も乏しい」との声も上がる。運営の厳しさから人員を呼び込む余力がない施設も少なくない。学童保育が利用できない待機児童の問題にもつながるなど状況は深刻化している。
緑川さんも「人手はまだまだ足りない」と痛感する。マカナでは放課後児童支援員の資格を持つ人を中心に9人が携わる。1日平均で50人の児童が利用し、6人で面倒を見ている。国の基準は満たすが、子どもの学習支援、けんかの仲裁など業務は多岐にわたる。地域内で支援員は少なく、一時期はボランティアを募った時期もあった。だが、万が一の事故などに備え、研修を受けた上、専門的な知識を持つ人が必要と判断し、受け入れを諦めざるを得なかった。
電気代の高騰も運営に追い打ちをかけ、運営はぎりぎりの状況だ。国の交付金を使用しているが、緑川さんは行政のさらなる支援が必要とし、「特に人材育成面は急務。放課後児童支援員の資格を取得しやすい体制づくりなどを整えてほしい」と訴えている。