渋谷を彩る飯舘の草木 福島大の大黒ゼミ生、24日庭園完成 自然を若い世代に伝える

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渋谷を彩る飯舘の草木 福島大の大黒ゼミ生、24日庭園完成 自然を若い世代に伝える

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若者や外国人観光客らが行き交う東京・渋谷の渋谷公園通り沿いに、福島県飯舘村を表現した「いいたて庭園」が期間限定で登場する。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、14年に及ぶ飯舘村と渋谷区の交流が縁で、福島大行政政策学類の大黒太郎准教授(55)のゼミ生が24日、公園通りで開催中のガーデニングコンテストで一角を飯舘の野草や庭木、御影石で彩り、完成させる。飯舘の豊かな自然、伝統、食文化を若い世代につなぎたい―。そんな思いを世界の流行発信地に込める。
いいたて庭園はオニツカタイガー渋谷店前の花壇約7平方メートルのスペースで制作する。ガーデニングコンテストは渋谷公園通商店街振興組合の主催で、今年で8回目。約400メートルある公園通り沿いの植樹帯に約40区画を設け、有名デザイナーらが個性あふれる庭園を制作する。6月上旬に審査があり、2026(令和8)年4月末まで展示される。
大黒ゼミは東日本大震災直後から村で「いいたて村の村民食堂」を開催するなど村民との交流を続けている。庭園造りのきっかけは3月8日、「いいたて村の道の駅までい館」で営まれた「忠犬ハチ公没後90年慰霊祭」での出会い。渋谷公園通商店街振興組合(川原恵理事長)の一員で、村内に移住した造園業・塚越栄[ひで]光[みつ]さん(49)から、振興組合主催のガーデニングコンテストへの参加を打診された。
振興組合は原発事故後、全村避難を余儀なくされた飯舘に寄り添い、渋谷公園通りの花壇に飯舘産の花を植えたり、村づくりの目標とする「までいライフ」の文字を刻んだ石碑を設置したりしてきた。2013(平成25)年にはJR渋谷駅前にある「忠犬ハチ公」のオブジェを、「子どもの声が村で聞こえるまでハチ公が待っていてくれる」との願いを込めて村に寄贈した経緯がある。
いいたて庭園では、大黒ゼミの狩谷涼太さん(21)、平野太[たい]葵[き]さん(21)、並木理帆さん(21)、亀山葉由さん(21)、小野慈稀さん(20)、千田理生[りゅう]さん(20)の6人が「ごんぼっぱを大切に~飯舘村の野草を守れ!~」をコンセプトに、「ごんぼっぱ」と呼ばれるオヤマボクチ、村特産のナツハゼ、「村の木」のアカマツ、庭木としてなじみのあるサルスベリなどを植える。村の御影石も使用する。
飯舘では冬の厳しい寒さを生かした保存食を作る「凍[し]み文化」がある。「ごんぼっぱ」の葉を混ぜた凍み餅もその一つで、大黒准教授は「冬の過酷な寒さの中、手間暇かけて作る村の郷土食を発信したい」と話す。狩谷さんは「村にとって大切な食材を身近に感じてほしい」と言い、ごんぼっぱの解説文を庭園に掲げる予定という。
塚越さんも上京し、ゼミ生の庭園造りを支える。「飯舘の食文化や伝統、豊かな自然を若い世代に紡いでいきたい」