少子化を生きる ふくしまの未来 第6部「育てやすさ」(5) つながり 「孤育て」対策急務

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子育てについて家族や親族の協力を得られない。頼る人がいない中、育児の責任を一人で背負い、追い込まれていく。第1子をもうけた後、そうした孤独感や孤立感、いわゆる「孤育て」に直面する親は近年、少なくないとされる。育児の習慣を学べない、困った時に身近に頼れるほどの関係性がない、そうした第1子の経験から子育てに苦手意識を持つことが、少子化につながるとの見方もある。
こども家庭庁は少子化の課題の事例として子育て家庭の多くが「孤立した育児」の中で不安や悩みを抱えているとしている。民間企業のアンケートなどでも裏付けられており、周囲の大人と話す機会さえもなくなりつつあるという。解消に向け、頼り先となる居場所づくりが急務となっている。
「子どもの状況もあって働きに行けない。だから、稼ぐことができない」「どうしていいか分からず行政を頼ったが、説教まがいのことを言われた」―。白河市のNPO法人NEXTしらかわが運営する「子育て女性の居場所
みらいず」には、やり場のない思いを持った親たちが集う。坂本学理事長は「核家族化や地域との関係の希薄化などで疎外感が生じているのではないか」と「孤育て」を実感する親たちが増えているとの見方を示す。
幅広い年代の母親が訪れ、今では1カ月当たり20人ほどが利用している。子どもの年代は小学生から高校生までと幅広く、不登校やひきこもりなどで悩んでいるケースもある。夫や親族を頼れない上、学校や地域の誰にも相談できずに追い込まれて訪れる人が大半を占めるという。
モットーは「口を出さない、指導しない、干渉しない」だ。「話を聞いてもらいたい」という人がほとんどで、こちらから何かを言うと意見に縛られてしまうためだ。坂本理事長は「まずは社会との接点をつくることが大事。同じ境遇の人同士のつながりの輪が広がり、共感し合える場所になれば」と願う。
「話を聞いてもらって楽になりました」と帰る人が多く、再び訪れる割合も高い。みらいずで外の世界に慣れ、学校へ再び通えるようになった子どももいる。■県内受け皿「少ない」
坂本理事長は「孤育て」に悩む人が居場所や頼る先を切実に求めている現状にじくじたる思いを抱く。「県内ではそうした境遇の親たちの受け皿がまだまだ少ない」と感じている。みらいずは県の補助を受けているが、「行政側にわれわれのような支援団体はまだ認知度が低い。活動内容が曖昧と受け止められているかもしれない」としながらも「子どもを育てやすい社会をつくるには多様な課題に目を向け、傾聴できる環境づくりが必要」と提言している。
=第6部「育てやすさ」は終わります=