福島のニュース
福島の正しい姿を世界に届け、復興を後押しする―。世界経済フォーラム(WEF)がつくる若者コミュニティーの福島県版の地域拠点が、7月に活動を始める。東北地方初の組織。発信力のある国際機関の強みを生かし、東日本大震災被災地を巡るツアー、福島県の食の魅力紹介を展開する。留学や県外移住を経てUターンした野村吏花さん(27)=福島市=が中心となり、WEFの承認を得た。海外で受けた福島県への偏見、移住先で出会った起業家からの刺激が原動力となった。
「復興の歩みを実際に見てほしい」。「県産食材のおいしさを味わってもらえたら」。野村さんは古里の未来のため、活動の青写真を描く。
地域拠点は「グローバルシェイパーズコミュニティ福島ハブ」。想定する活動は【下記】の通り。国内外の人々が県内を巡り、食の魅力を知って福島に心を寄せる契機とする。県内の中高生向けの企画も開き、将来的に県内で活躍できる人材輩出を目指す。
初年度の今年は十数人での活動開始を見込み、7月5、6の両日、浪江町でキックオフ合宿を行う。メンバーで話し合いを重ね、実情に合った取り組みを具体化させていく予定だ。
WEFの若者コミュニティー「グローバルシェイパーズコミュニティ」は2011(平成23)年発足。世界人口の過半数が27歳以下という現状を踏まえ、若者の声を活動に取り入れる狙いがある。各国に合わせて約500カ所の地域拠点ができ、33歳以下の計1万人超がボランティアとして加入している。国内は東京、横浜、大阪、京都、福岡、沖縄の計6カ所。各20人程度が貧困や教育格差の是正、伝統文化の継承など地域に合ったテーマを設けている。今年、福島県と共に東京2カ所目となる拠点が始動する。
高校卒業後の2017年から3年間、ドイツに留学した野村さん。東京電力福島第1原発事故から5年以上経過していたが、福島県出身と伝えると「近づかないで」と心ない言葉をかけられた。正しい情報が届いていないと痛感した。
コロナ禍の影響で帰国し、2021(令和3)年2月に沖縄県に移住。ドイツ名物「スパゲティアイス」の店を立ち上げ、知人の紹介で沖縄の拠点に参加した。現地の歴史に触れ、米軍基地の問題を抱える沖縄と、原発事故の課題に直面する福島が似ていると感じた。「住みたいまちは自分たちでつくる」と自立を目指す沖縄の人々に出会い、「自分が福島のために行動しよう」と昨年10月に古里の福島市に戻った。
福島県の関係人口創出に向けた「ふくしま部」を設けていた横浜の拠点の活動にも携わった。共にふくしま部に関わった安藤智博さん(28)=郡山市出身=、野地雄太さん(29)=福島市出身=と一緒に福島県拠点の設立に奔走した。
野村さんは7月9~11日にスイスのジュネーブで開かれるグローバルシェイパーズコミュニティの総会に出席し、各国の若者やWEFに福島県の現状や活動を発信する。「次の世代が自信を持って『福島出身』と言えるまちをつくりたい」と前を向く。■31日までメンバー募集
グローバルシェイパーズコミュニティ福島ハブは、31日までメンバーを募集している。加入条件は福島が好きで、福島で活動する意思のある18歳以上27歳以下。6月に選考を行う。問い合わせは福島ハブ
メールアドレスgsc.fukushimahub@gmail.comへ。【想定している主な活動】■福島県の関係人口拡大東日本大震災被災地などを巡るツアーを企画。福島の現状に理解を深め、未来を考える仲間を増やす。■福島県の食の魅力発信イベント開催やコミュニティー設置などを検討する。■県内の中高生向け企画海外を身近に感じられる企画を通し、世界に関心を持ってもらう。※世界経済フォーラム(WEF)
国際的、地域的な経済問題に取り組むため、政治や経済、学術など各分野の指導者層の交流促進を目的とした国際機関。1971(昭和46)年設立。年次総会に当たる「ダボス会議」が毎年、スイスのダボスで開かれ、会員企業の最高経営責任者(CEO)、政府首脳、学界代表者らが一堂に会す。内堀雅雄知事が2016(平成28)年1月のダボス会議などで福島県の復興状況などを発信した。