福島のニュース
少女が面識のない人物に誘拐される事件が今月、福島県内で2件明らかになった。18歳未満がインターネットで何者かとつながり、交際・知人関係に発展する前に被害に遭う「SNS起因犯罪」とされる。昨年は26人が巻き込まれ、大半が性犯罪だった。ネット環境の充実によって被害の低年齢化が懸念されている。保護者が交流サイト(SNS)やオンラインゲームの利用状況を把握しにくく、対策できない家庭もあり、専門家は親子で情報を適切に判断する能力を磨く必要性を訴える。■氷山の一角
県警によると、2020(令和2)年から2024年までのSNS起因犯罪の種類別被害者数は【表】の通り。年間20~30人程度で推移している。未成年を深夜に連れ回したり、わいせつな行為をしたりする県青少年健全育成条例違反や児童買春・児童ポルノ禁止法違反が大部分を占めた。略取誘拐、逮捕監禁、不同意性交等といった重要犯罪の被害も毎年のように起きている。
県内では、SNSを通じて知り合った未成年者を誘拐し、自殺のほう助やわいせつな行為などをしたとされる男が今年に逮捕された。
県警は精神的な苦痛を理由に打ち明けないケースが相当数あるとみている。捜査関係者は「明るみに出たのは氷山の一角」としている。被害の全体数を把握できず、犯人が野放しになっている可能性を指摘する。■見知らぬ人に親近感
子どもたちの中には、SNSやオンラインゲームに没頭するあまり、悪意のある人物につけ込まれる危険性をはらむ。
福島市の男子中学生(12)はかつて、親に気付かれない早朝にオンラインゲームを楽しんでいた。長時間の利用を注意されたためだ。他のプレーヤーと音声でやりとりしながら協力することに魅力を感じ、のめり込んでいった。顔も性別も分からない人に親近感を覚えていた。
「どこに住んでいる?」。ある時、ゲーム中に音声で尋ねられた。この時は居間だったため、保護者が会話内容を聞き逃さなかった。すかさず父親は息子に個人情報を伝えないよう注意した。
父親は「偶然、相手とのやりとりを把握できたが、もしできなかったらと思うとぞっとする」と表情を曇らせた。■家庭でルールを
子どものSNS利用に詳しい文教大情報システム学科の池辺正典教授はスマートフォンに加え、インターネットに接続できるゲーム機の子どもの使用には注意が必要だと指摘する。
スマホよりゲーム機を先に買い与える傾向があり、児童らが善悪などの判断基準が未熟なまま野放図に利用し、トラブルに発展する心配があるためだ。
さらにインストールするアプリを保護者が管理するペアレンタルコントロールの活用を求める。「早い段階から、親子で判断能力を身に付けることが重要だ」と強調した。
県警は相談窓口の周知を強化している。県警本部少年女性安全対策課の鈴木悟次席は「家庭内で使用のルールを決めてほしい」としている。