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「東北弁や会津の民謡など言葉の違いを超えて発信したい」。福島県会津美里町出身のシンガー・ソングライター空野大さん(40)=東京都在住=は7月3日から6日まで、フランス・パリで開かれる日本文化をテーマにした総合博覧会「ジャパンエキスポ・パリ2025」に初出演する。民謡とポップスを融合させて編み出した独自の音楽スタイル「訛[なま]り唄」で古里の民謡「高田甚句」や「会津磐梯山」をベースにしたオリジナル曲を披露する。
空野さんは郡山市に生まれ、会津美里町で育った。「ハァ高田恋しや伊佐須美様よ。杜が見えますほのぼのと」。高田甚句は会津美里町内の盆踊りで歌い継がれており、物心ついた時から生活の一部だった。高校時代にギターを弾き始め、会津若松市の神明通り商店街で路上ライブを行っていた。都内の音楽専門学校に進み、その後はシンガー・ソングライターとして日本全国で活動している。2018(平成30)年、ミュージシャン渡辺俊美さん(川内村生まれ、富岡町育ち)が発案した「アコワングランプリ」で優勝。音楽イベント「風とロック芋煮会」をはじめ、県内各地でもライブを繰り広げている。動画投稿サイト「ユーチューブ」でも曲の動画を発信している。
6年ほど前、ライブで盛り上がる新たなスタイルを模索した。「小さい頃から聞き続けてきた民謡を自分なりに表現できないか」。自らの音楽の原点である「高田甚句」や「会津磐梯山」にたどり着いた。古里の伝統を広く発信できる機会にもなると考えた。ギターの弦を三味線のように弾き、東北なまりで歌った。聴衆からの反応も良く「これだ」と思った。「どっこいしょ」「わっしょい」など日本人になじみのあるかけ声も織り交ぜ、唯一無二のスタイルを確立した。
世界で通用するか試したいと思うようになり、以前から憧れていたジャパンエキスポ・パリへの応募を決意。審査を通過し念願の出演が決まった。ステージでは4日間、各日20~30分で4、5曲を演奏する。代表曲「村」などを歌う予定。ステージ上の大型モニターには会津の風景を映して地元の魅力を発信する計画だ。念願の舞台まであと1カ月余り。古里への恩返しのステージになるよう表現力に磨きをかける。
県内でのライブや実家に帰るたび、過疎化が進んでいるのを感じる。パリでの演奏をきっかけに、その後は米国やマレーシア、台湾など日本文化の人気が高い海外での演奏に挑戦するつもりだ。「会津や東北の魅力を発信し、海外の人が足を運ぶきっかけにしたい」と誓う。※ジャパンエキスポ・パリ
欧州各地から日本文化に関心を寄せる約20万人以上が集まり、アニメや漫画、ゲーム、音楽などのポップカルチャーと日本の伝統文化を紹介する博覧会。パリが発祥で日本大衆文化の祭典ともいわれる。20年以上、毎年パリで開催されている。会場はパリ北部のノール・ビルパント展示場。これまでにミュージシャンのYOSHIKIさんや漫画家の浦沢直樹さんら日本の多くの著名人がゲスト出演している。