豪から誘客、福島県が強化 現地旅行業協と連携へ覚書 通年の観光需要増へ ホープツーリズムにも関心

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豪から誘客、福島県が強化 現地旅行業協と連携へ覚書 通年の観光需要増へ ホープツーリズムにも関心

福島のニュース

【豪州シドニーで本社報道部副部長・渡辺浩】福島県はオーストラリア旅行業協会と連携し、通年での県内への誘客を強める。内堀雅雄知事が現地時間26日午後(日本時間同)、協会のディーン・ロングCEOと覚書を交わした。豪州ではスキーなど冬季レジャーを中心に旅先としての日本人気が高く、協会は四季の花々や歴史、文化、郷土料理など県内の多彩な観光資源は国民の好みに合うとみている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興状況に触れる「ホープツーリズム」にも関心を示しており、県は覚書締結を足掛かりに観光需要の全県への波及を図る。
協会が日本の自治体と連携するのは初めて。覚書に基づき協会加盟の旅行業者らが年内に来県し、各地を巡り、ツアー商品づくりに取りかかる。県内の観光素材に関する情報を送客促進に向けて開く各種セミナーなどで広く発信し、旅行者の増加に結び付ける。
日本政府観光局(JNTO)によると、豪州からの旅行者には(1)滞在日数が平均13・7泊で、他国のほぼ2倍(2)旅先での1人当たり支出額が39万9千円で他国より多い(3)体験型観光を好む(4)景観や歴史、文化、食への関心が高い―といった特徴がある。訪日客は増加傾向にあり、2024(令和6)年は前年を約30万人上回る92万200人に上った。県内には6249人が訪れ、前年から倍増した。
冬の訪問先は有名なスノーリゾート地を抱える北海道や長野県が「定番」とされてきたが、豪州国内では近年、新たな発見や体験を楽しめる旅先を探す動きが出始めている。こうした情勢の変化を踏まえて県が協会に協力を働きかけ、覚書の締結に至った。
県は会津地方での冬季レジャーに加え、他地域にはないホープツーリズムの取り組みや桜などの花々、城に代表される歴史・文化遺産、地域ごとに変化に富んだ景観、東京からJR東北新幹線で来られるアクセスの良さなどをよりアピールしていく。受け入れ態勢としては2次交通の充実などが課題となる。
現地の旅行業者やツアーガイドら約1700の企業・団体が加盟している協会との連携は観光客の呼び込みに好影響をもたらし、多くの人が訪れれば震災と原発事故に関する風化の防止にもつながると期待している。親日国で知られ、外交関係も安定している豪州における福島県の知名度が高まれば、安定的な来訪者の獲得につながると見込んでいる。
覚書の締結はシドニーのラディソン・ブル・プラザ・ホテル・シドニーで行われた。内堀知事は「福島に来てくださる人を増やせると信じている」と語り、ディーンCEOは「福島は地域ごとに多様な魅力がある」と応じた。