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政府は27日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌の再生利用や福島県外最終処分への理解醸成に向け、首相官邸での利用を盛り込んだ基本方針を決めた。官邸敷地内の花壇などでの活用を想定している。政府が率先して先行事例を積み重ねるため、各府省庁や地方出先機関での利用も検討する。県外最終処分の実現に向け、夏ごろまでに策定するロードマップ(工程表)には当面5年程度で取り組む内容を示す。
基本方針は、首相を除く全閣僚で構成する会議で決定した。林芳正官房長官は会議で再生利用の推進について「国民の幅広い理解醸成が重要だ」と強調。必要性と安全性を情報発信するよう各府省庁に指示した。
除染土壌の再生利用は県内での実証事業以外では初となる。官邸で利用する時期や量は今後詰める。再生利用基準に即し、放射性セシウム濃度1キロ当たり8千ベクレル以下の除染土壌を使用する。作業中は環境省が定期的に周辺の放射線量を測定し、完成後も適宜測定して結果を公表する。
政府は先行例により再生利用の安全性を示し、全国各地の公共工事などへの活用につなげたい考えだ。ただ、官邸で用いる除染土壌はごく少量な上、一般国民にとって身近とは言えない場所での活用により、どの程度、理解が広まるかは見通せない。
基本方針には再生利用の推進の他、中間貯蔵施設や利用現場の見学会などの拡大、最終処分場の候補地選定に向けたプロセスの具体化を進めることなどを盛り込んだ。
中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)には、県内の除染で出た土壌や廃棄物など約1400万立方メートル(東京ドーム11杯分)が保管されている。このうち、約4分の3は再生利用基準を満たしている。法律に定める2045年3月までの県外最終処分の実現には総量を減らす再生利用の進展が鍵となる。ただ、東京都や埼玉県など県外での計画は地元の反発を受け事実上、中断している。