福島のニュース
いわき信用組合(本部・福島県いわき市)による巨額の不正融資問題では、8億~10億円もの使途不明金の存在が明らかになった。第三者委による任意の調査には限界があり、全容解明はほど遠い状況だ。信組は東北財務局から今月30日までに業務改善計画を提出するよう求められている。「調査すら終わっていないのにどうやって計画をまとめるのか」「真相解明できるのか」。信用第一の金融機関を舞台にした前代未聞の不祥事。関係者からは信組の行く末を懐疑的に捉える声がやまない。
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「本当のことをどれだけ話しているのか分からない。信用を取り戻すのには時間がかかるだろう」。信組と50年近く付き合いがある80代の組合員男性は不安視する。一連の問題で、第三者委の調査に対する信組側の隠蔽[いんぺい]行為や虚偽の説明を繰り返していたことが指摘されている。さらに、信組の無断借名融資リストを管理していたパソコンを管理担当者が不祥事発覚後にハンマーで破壊したという、耳を疑うような証拠隠滅ととれる手法も明らかになった。組合員の男性はこのような行為の連続に「パソコンの破棄も幹部からの指示があったのではないか」と疑いの目を向けた。
信組の本多洋八理事長は5月30日の会見で、今後も内部調査を進め、不正行為を明らかにしていく姿勢を示した。一方、第三者委が強調した調査妨害ともいえる信組の調査への非協力的な態度が、全容解明を妨げているとの指摘がある。信組は、組織文化を改革するため役員刷新による経営管理態勢の見直しを決めた。現執行部9人のうち7人が交代する。期限までわずか1カ月。役員刷新による新体制のスタートが今月13日の総代会以降と考えると、「待ったなし」の状況だ。
総代を務める70代男性は「新体制になったとして、業務改善計画を提出するまでに時間もそんなにない。不正に名義を使われた人への説明や謝罪も必要になるとは思うが、果たしてどうするつもりなのか」と疑問を呈した。信組は3日と5日にいわき市で地区別の総代懇談会を開催し、一連の問題について謝罪、説明する予定という。
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絶対的な力を持つ江尻次郎元会長の下で繰り広げられた、類例を見ないほどに悪質な不正行為の数々。第三者委は報告書で、「再生するためには、多大な社会的批判を乗り越えるための真面目で善良な役職員の真摯[しんし]な努力が必要不可欠」と訴える。
自浄作用の働く組織に変革できるか、新執行部の手腕が注目される。【不正融資の経過】2002年
7月
つばさ信用組合と合併2004年
3月
ペーパーカンパニーを使って大口融資先に迂回[うかい]融資2007年
3月
大口融資先への無断借名融資の開始2011年
3月
東日本大震災
大口融資先への資金提供終了
隠蔽のための無断借名融資開始2012年
1月
公的資金200億円注入2012年
3月
無断借名融資の償却開始2024年11月
迂回融資の事案公表2025年
5月29日
東北財務局から業務改善命令
5月30日
第三者委員会が調査報告書公表
6月13日
総代会(新体制決定)
6月30日
東北財務局への業務改善計画提出期限