福島のニュース
福島県内で最多、東北地方で2番目に多い約32万人が暮らす郡山市も少子化と無縁ではない。市立小中学校と義務教育学校を合わせた76校の児童生徒は2万3555人。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生直後の2011(平成23)年度から2割減り、学校の統廃合が進んでいる。
市教委によると、来春に統合する逢瀬地区の河内小と多田野小に続き、中田地区では小中学校5校を2027(令和9)年度、隣の緑ケ丘地区の学校に統合する検討が続く。小学校は宮城、海老根、御舘を緑ケ丘一小、中学校は宮城、御舘を緑ケ丘中に集約する案で、実現すれば、旧中田町に学校はなくなる。
「児童生徒や将来の子どもたちの教育環境を保つ」ことが、統廃合の主な理由だ。一方、学びやの存在は給食や教材などの仕事を地元に生んできた。学校が姿を消せば、それらの需要は失われる。影響を受ける事業者からは「学校がなくなれば商売を続けるのは厳しくなる」との懸念の声が上がる。
中田地区の5校に通う子どもの数は119人で、14年前(339人)の3分の1強と全市の減少ペースを上回る。2023年秋に市教委が開いた住民向け教育懇談会では、児童生徒数は2029年に105人にまで減るとの推計が示された。これが再編のきっかけとなり、昨夏には町内会やPTAの代表による「検討会」が発足。協議の中で複式学級の常態化、グループ学習やクラス替え、団体競技の難しさなどが浮かんだ。課題を解消する在り方を求め、地区外との統合という判断に至った。
宮城小に次女、三女が通う40代男性は「現状ではクラブ活動も成り立たない。統合は仕方ない」と検討会の姿勢を支持した。「やりたいことを選択できる環境とは言い切れない」―。地域の危機感は、検討会が今年2月に市教委に提出した要望書の文言にもにじんでいる。
中田町商工会によると、学校関係の取引はパン製造、小売店など主に食材を扱う会員事業者に多い。御舘小、御舘中の給食用に野菜や肉を卸している「ゑびすや」もその一つだ。
創業約90年の店は3代目の吉田一美さん(63)が妹と営む。店を継いだ約40年前は売り上げの3分の1を給食用が占め、今も2割弱に上る。学校の統合後すぐに店を畳む気はないが、先々への影響は見通せない。「いつまで商売を続けられるだろうか」と安定販路を失う不安を漏らした。
中田町商工会と中田地域振興協議会で会長を務める三瓶光雄さん(75)が海老根小に通っていた約60年前には、同校で約250人が学んでいた。今の在校児童数の25倍に当たる。少子化の深刻さも、統合の狙いも理解しているが、「学校がなくなれば、活気の面も含め地元経済への影響は小さくない」とみている。
底の見えない少子化に特効薬はなくとも、衰退を極力抑えるすべはないか―。三瓶さんは急カーブなど危険箇所が多く、市中心部と往来しにくい道路事情を例に挙げ、「人が来やすい環境を整え、関係人口を増やしてほしい」と行政に検討を求めている。