福島のニュース
出荷シーズンを迎えつつある福島県のサクランボが例年に比べて不作となる見通しとなり、一部産地に影響が出始めている。JAによると、県北地方では、春の天候不順により着果が例年の6~7割まで落ち込んでいる。品質は十分だが果樹農園でサクランボ狩りを取りやめたり、受け入れを制限したりする動きも。フルーツを売りに、県内で最も多くふるさと納税の寄付額を集める福島市では、返礼品の申し込みを既に打ち切った。道の駅での売り上げや誘客の減少など観光への影響の広がりを懸念する声も上がる。
「ここまで不作なのは40年以上の栽培歴で初めて」。福島市飯坂町にある、やまこう紺野果樹園代表の紺野孝一さん(62)の顔にやりきれなさが浮かぶ。
例年、個人客を中心に人気を集めていたサクランボ狩りの今年の受け入れを断念した。例年よりまばらな実の付き具合から、主力の「佐藤錦」を中心に収量が半分以下になる見込みとなったためだ。量は少なくなる一方、収穫予定の実は色つやが良く、粒の大きさは申し分ない。発送での注文の予約は受け付けているが「(収量によって)応えられない場合がある」と苦しい胸中を明かした。
福島市観光農園協会長の佐藤孝さん(61)によると、現時点では多くの市内の果樹農園はサクランボ狩りの実施を見込んでいる。ただ、「状況によって受け入れを制限する場合もあるかもしれない」と気をもむ。
対応を取る生産者は県北地方のみにとどまらない。会津地方のある農園では、今月末の団体客の予約の受け付けを一時休止した。品種によって着果にばらつきがあることなどから慎重にならざるを得ないという。
影響は園地以外にも広がっている。福島市は、ふるさと納税の寄付者に対するサクランボの返礼品は十分な量の確保を見込めず、5月下旬の段階で申し込みを打ち切った。国見町にある道の駅国見あつかしの郷内の「くにみ市場」は、1番人気の佐藤錦を間もなく取り扱うが、仕入れは昨年の半分以下になりそうだという。佐藤尭彦副店長(39)は「佐藤錦は買い求める客や問い合わせが一番多い。店頭に並ぶ数が少なくなると、6月の店舗の売り上げにも影響が出かねない」と危機感を募らせた。
JAふくしま未来や生産農家によると、収量の低迷見込みは4月の低温、天候不順が原因。4月中旬から下旬にかけ、花の受粉を促すためミツバチを農園に放したが、例年より飛び回る量が少なく、実の付き方も不安定になったとみられる。今年の着果量は、わせ種の代表品種で、既に出荷が始まった「紅さやか」が例年と比べて約6~7割に、6月中旬に出荷が始まる「佐藤錦」が6割程度に落ち込んでおり、関係者は収量がどの程度になるかを注視している。