福島のニュース
少子化の影響は公共交通の分野にも及んでいる。通勤通学などの生活路線として福島、宮城両県を結ぶ阿武隈急行線は利用低迷を受け、岐路に立たされている。宮城県側では、鉄路としての存廃を含めた議論まで持ち上がった。
運営する阿武隈急行(本社・伊達市)によると、2024(令和6)年度の輸送人員の総数は194万人。このうち通学定期の利用者は71万人と4割近くを占める。ただ、通学定期利用はピークだった1996(平成8)年度に比べて6割まで落ち込むなど、通学需要の減少が業績の低迷の一因となっている。同社は「特に、伊達市の県立高2校の統合による余波は大きい」と分析する。
高校生ら乗客の減少を背景に、2024年度の鉄道事業は過去最大の8億6300万円の赤字を計上した。開業から35年以上経過し、老朽化した設備の更新が必要な箇所は沿線全域にわたる。ただ、捻出できる費用は限られる。経営改善を図らなければ今後、運行の安全自体にも影響しかねないという。
関係者も手をこまねいてるわけではない。同社は福島学院大(福島市)と包括連携協定を結び、若者らの利用促進策を打ち出そうとしている。今年に入り、学生の視点を対策に生かすためのワークショップを重ねている。学生側からはこれまでにダイヤ編成の改良、電子決済の導入などの案が寄せられた。第2回に参加したある学生は「利便性を考えると阿武隈急行線はなくてはならない存在」と訴えた。
同社総務営業部長の千葉亨さん(64)は「若い世代に少しでも乗車する習慣を持ってもらえるようにしたい」とし、若者向けの乗車券を企画するなど解決に向けた模索を続けている。
苦境に立つのは路線バスも同じだ。会津地方全域に路線網を持つ会津乗合自動車(本社・会津若松市)では路線バスの通学定期券の2023年度の販売数が2019年度に比べて約75%減少した。
地域で高校などの統廃合が進む中、県は地域公共交通計画の中で長距離通学者のため、路線バスを維持する必要性を強調。事業者、自治体と連携した利活用を進める考えだ。同社も遠方から通学する生徒らのため、駅への乗り入れなど利用状況に応じて利便性を高めている。今後はDX化などにより、さらに利用しやすい環境づくりを進める考えだが、同社バス事業本部は「導入には多額の費用がかかる見通しだ。行政の補助などが不可欠」と少子化時代に対応できるよう、新たな支援策を求めている。