2023年県内宿泊 訪日客経済効果42億円超 業種幅広く、雇用創出398人 福島県への恩恵「まだ限定的」

  • [エリア] 田村市
2023年県内宿泊 訪日客経済効果42億円超 業種幅広く、雇用創出398人 福島県への恩恵「まだ限定的」

福島のニュース


2023(令和5)年に福島県内を訪れたインバウンド(訪日客)の宿泊者による県内への経済波及効果は42億4700万円で、雇用創出は398人となっている。県が5日までに初めて推計値をまとめた。小規模の自治体の年間予算に匹敵する規模で、宿泊業や飲食業など幅広い業種に恩恵があった。一方で、国内全体の外国人観光客の総数や消費額と比べると、福島県への滞在はごく一部に限られる。さらなる誘客に向けては、観光資源の磨き上げに加え、外国語表記など受け入れ体制のさらなる充実が課題となる。
観光庁の調査結果などを基に、県統計課が独自にまとめた。訪日客の来県による産業部門別の経済波及効果は【表】の通り。利用料金などの直接的な消費に加え、従業員の所得の向上などに伴う県内への経済的影響の金額を合わせた。最多が宿泊業の16億7100万円、次いで飲食サービスが8億7200万円で、合わせて全体の6割を占めた。民芸品や酒類などを含む買い物も多く、商業に2億6500万円、食料品に1億8400万円など多くの業種に効果が広がった。
増加した雇用者数の内訳は宿泊業が最多の176人。次いで宿泊サービスが117人となった。二つの部門で全体の約7割を占めた。2023年に県内で宿泊した外国人は8万9493人(推計値)で、国・地域別では台湾が半数を占め、タイ、中国、米国からも大勢が訪れた。
県の統計と単純比較はできないが、観光庁が発表した2023年の国内全体の外国人旅行者数は約2507万人となっている。訪日客の旅行消費額も5兆3065億円となる一方、多くが三大都市圏に集中。今年に入り、改善は進んでいるが「東北、福島県へのインバウンドの恩恵はまだまだ限定的」とする見方も多い。
県内でも温泉や自然風景、歴史・文化を楽しめる自治体を中心に入り込みが増えるなど地域的な格差も指摘されている。田村市滝根町の観光鍾乳洞「あぶくま洞」では、2023年度は訪れた外国人が約3600人、2024年度は約7千人と増加している。一方で、地元に宿泊しないツアー客なども多く、地域を周遊させるための仕組みづくりが課題となっている。
外国語に対応した観光地づくりやキャッシュレス決済の普及などインバウンドの受け入れ体制づくりも急務だ。全国的に誘客に向けた競争が激化する中、県観光交流課は「福島県ならではの観光資源を磨き上げ、経済効果を向上させたい」としている。