福島のニュース
全国の私立短期大学のうち、1割近くは2026(令和8)年ごろまでに「募集停止」や「学科の削減または再編」を予定し、3割は直近3年間の定員充足率が70%に満たない―。日本私立短大協会が昨年度加盟校に実施した調査では、273校が運営状況の厳しさを訴えた。
高等教育機関の一角を担う短大の縮小、再編による影響は、各校の存続だけにとどまらない。文部科学省と協会の調査によると、短大への進学者は7割が地元出身で、卒業後に地元で就職する割合も7割超に及ぶ。地域に根差し、幼稚園教諭や保育士をはじめ幅広い人材を輩出してきた学び舎の喪失は、地域社会の維持にも影響しかねない深刻な問題とされている。
「学生の減少は予想を超えて進んでいる」。女子のみが通う桜の聖母短大(福島市)の関係者は話す。4月の理事会で、来春の入学生からの共学化を決めた。「知性と教養を兼ね備えた女性を育む」などの方針を掲げ、幼稚園教諭や保育士、栄養士などを育成してきた。ただ、少子化の加速や多様性の浸透を背景に、教育機関を巡る環境や若者のニーズは複雑化している。開学70年の節目を機に、社会情勢の変化を踏まえて大きな決断に至ったという。
定員130人に占める入学者数の割合を示す今年度の「充足率」は53%で、4年前を20ポイント下回るなど厳しさを増す。特に県外からの学生確保が難しく、全体の6%ほどにとどまる。栄養士を目指す若者の減少も影響を及ぼしている。
保育士を志す男子高校生や学校関係者らから進学の要望などが寄せられ、昨年4月ごろから共学化の検討が学内で本格化した。「共学化は学校の維持に必要な選択肢」との意見が理事会や同窓会で出るなど前向きな議論を重ねてきた。変革に対し、卒業生や保護者に驚く声はあるものの、目立った反対はないという。
1万人を超える人材を送り出してきた同校にとって共学化は、地域に求められるエッセンシャルワーカーを育てる使命を守るための判断でもある。今後は学科再編や取得できる資格の充実などを図り、これまで以上に地域に開かれた学びの場を提供する考えだが、県内の若者が減り続ける傾向に、解決の兆しは見えない。
生活科学科福祉こども専攻の堺秋彦学科長は「社会に必要な人材を地元で育てる体制を保つためには、短大単独の努力だけでは限界がある」と強調。「若者を県外に流出させないためにも教育機関や企業、行政が連携し、地域の魅力に触れる機会を増やす取り組みが欠かせない」と訴えた。