福島のニュース
通常国会会期末の22日まで残り2週間となった。米価高騰の収束は見通せず、コメ問題は7月3日公示、20日投開票が有力視される参院選の大きな争点の一つとなりそうだ。参院選前に米価を引き下げ政権浮揚に望みをかける与党に対し、野党は政府対応の遅れを批判。コメ問題が参院選をにらんだ政争の具となりつつある。福島県関係国会議員からは、与野党を超えて国民目線で政策論争に徹するべきだとの指摘が相次ぐ。(東京支社報道部編集主任・佐藤庄太)
3月に始まった一般競争入札による政府備蓄米の放出は十分な値下げ効果を生まなかった。「コメは買ったことがない」との失言で更迭された江藤拓前農林水産相の後任となった小泉進次郎農相は5月21日の就任からわずか2日後、「5キロ当たり2千円で店頭に並べる」と宣言。入札から随意契約に切り替え、局面打開に動いた。小売業者に備蓄米30万トンを集中供給し、コメ全体の価格引き下げを狙った。ただ、店頭では即日完売が続き、インターネット通販でも売り切れが相次ぐなどコメ問題の収束は見えない。■福島県関係議員、国民目線で論争を
自民党の星北斗参院議員(福島県選挙区)は小泉農相の手腕を評価した上で、「持続可能な生産体制と消費者の納得できる価格を実現する農政の在り方を与野党関係なく議論すべきだ」と訴える。公明党の若松謙維参院議員(比例代表、郡山市在住)も自党の提言を踏まえた政策に期待を寄せ「与野党が協力し、消費者の不安解消と生産者が安心してコメを生産できる環境をつくりたい」と話す。
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小泉農相の高い発信力を受けてか、共同通信が5月24、25の両日実施した全国世論調査で石破内閣の支持率は31・7%に上昇した。前回5月17、18両日の調査に比べ4・3ポイント増加した。
政権浮揚の兆しを野党は警戒する。立憲民主党の野田佳彦代表は5月28日の衆院農林水産委員会で「生産者にとっての適正価格も考えなければいけない」と述べ、値下げに傾斜する姿勢にくぎを刺した。国民民主党の玉木雄一郎代表は同委員会で、政府備蓄米を「あと1年たったら動物の餌になるようなもの」と発言し、反発が相次ぎ釈明に追われた。
「政策論争すべき重要な問題だが、党利党略ではダメだ」。立憲民主党の小熊慎司衆院議員(福島県3区)はコメ問題を政争の具にすべきではないと主張する。「コメの生産価格安定のために何ができるか、各党が知恵を絞り、選択肢を国民に示すべきだ」と話す。
一方、共産党の岩渕友参院議員(比例代表、福島市在住)は備蓄米放出の遅れを指摘した上で、減反政策などを進めてきた自公政権の農政が米価高騰を招いたと正面から批判。コメ増産、所得補償と価格補償を掲げ、「生産者が作り続けられる農政に抜本的に変えなければ」と対決色を鮮明にする。
コメどころの福島県は「農業票」を巡る支持動向が複雑に絡み合う。参院選を見据え、コメ問題の争点化を避けたいとの思惑も透けて見える。米価の引き下げという方向性は与野党で一致しているが、具体的な政策の違いを打ち出せるのか。有権者は注目している。
終盤国会は「夏の陣」を占う前哨戦の様相が色濃くなってきた。11日夜には党首討論が予定されている。