【震災・原発事故14年】避難区域設定12市町村 子育て世帯転入増 福島県「教育環境整備の表れ」

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【震災・原発事故14年】避難区域設定12市町村 子育て世帯転入増 福島県「教育環境整備の表れ」

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東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で避難区域が設定された福島県内12市町村に2024(令和6)年度、国と県の「12市町村移住支援金」を受けて移住した251世帯412人のうち、9歳以下の子どもは71人で過去最多となった。ふくしま12市町村移住支援センターがまとめた。被災地に子育て世帯の転入が増えている形で、県やセンターは「子育てや教育の環境が整ってきている表れ」とみている。一層の教育環境の充実や居住環境の整備、親の就職支援などを通して、子育て世代をさらに増やしたい考えだ。■2024年度
支援金受給者
支援金の交付は2021年度から始まった。交付を受けた移住者のうち9歳以下の子どもは、2022年度が36人、2023年度が44人だった。2024年度は前年度より27人(6・13%)増加した。原発事故で一時は住民が大幅に減った地域に、子どもたちの元気な声が響けば活気が出る。コミュニティーの再生にもつながる。各市町村は子育て世帯の転入を歓迎。センターによると、移住は隣県の宮城の他、東京、埼玉、千葉、神奈川など首都圏からが多いという。
支援金制度の活用にかかわらず、2019年度以降の12市町村への移住者数・世帯数の推移は【グラフ】の通り。子育て世帯が増加しているのは大熊、富岡、浪江などが中心とみられ、いずれも特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除に伴い教育環境の整備が進んでいる地域だ。センターは「子育てしやすい要素が増えている」と分析する。県は「市町村の努力により、災害のイメージが払拭され地域の魅力向上につながっている」(避難地域復興課)とみる。
大熊町は認定こども園を併設した小中一貫の義務教育学校「学び舎ゆめの森」を整備し、一人一人の自主性や個性を大切にする特色豊かな教育を展開している。子どもの増加を受け、複式学級の一部が単式学級になった。富岡町では子育て支援拠点として整備した地域交流館「富岡わんぱくパーク」の累計来場者が今年4月、10万人に達し、にぎわいが生まれている。
子育て世帯が12市町村への移住を決断するには、親の就職先確保が課題となっている。センターは今年度、求職者らの相談に応じるキャリアアドバイザーの相談窓口を新設した。家族で暮らせる規模の住宅確保も求められている。大熊町は今年度、町内に戸建てやアパートなどの賃貸住宅を建設する際の費用を一部補助する新制度を設けた。
双葉町の主婦綾部優希さん(33)は昨年10月、夫と子ども4人と共に横浜市から移住した。豊かな自然の中で伸び伸びと子育てができる環境に魅力を感じた。ただ、町内にはまだ保育園などがなく一時的に「待機状態」となったが、今は隣の浪江町にあるこども園に次女(2)を通わせている。双葉町は2028年に新教育施設の町内での開校・開園を計画している。綾部さんは「人を呼び込むためには、幼稚園や保育園を増やす必要がある」と訴える。※12市町村移住支援金

田村、南相馬、川俣、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の12市町村に移住する人を対象に家族世帯に200万円、単身に120万円を国と県が支援する。2023年度からは1人当たり100万円の「子育て加算」が追加された。住民票を移す前に、連続3年以上県外に在住していたことや、12市町村に5年以上継続して住むことなどが条件。東日本大震災時に住んでおり、県外から帰還する場合などは対象外となっている。