福島のニュース
外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える「外免切替」が福島県内で急増している。2024(令和6)年は413人で、ここ数年で2倍以上に膨らんだ。労働力不足を背景とした外国人材の雇用増やインバウンド(訪日客)の伸びが要因とみられるが、日本の交通ルールの周知徹底が喫緊の課題だ。外国人運転手による逆走事故や飲酒運転などが全国で頻発しており、県警は重大事故の未然防止に向け、官民一体での取り組みを急ぐ。
県内で2020年以降、外免切替した人数と外国人運転手の交通事故発生件数は【グラフ】の通り。外免切替は2024年が413人で、2020年の189人から2倍以上となっている。合格率は3割前後で推移している。事故発生件数も増加傾向で、昨年は24件と過去5年間で最多だった。県によると、県内の外国人数は労働力不足を背景に年々増え、昨年12月末時点で1万9650人と過去最多を更新した。外国人を雇い入れる企業側への注意喚起も求められる。
近年は訪日客がレンタカーを利用し、観光地を訪れる事例が多い。会津若松市の鶴ケ城公園を管理する会津若松観光ビューローが2024年度に実施したアンケートでは、外国人観光客1476人のうち約3割に当たる477人がレンタカーで鶴ケ城公園を訪れていた。
福島市のトヨタレンタカー福島駅新幹線口店には1日平均1~2人の外国人が利用に訪れ、行楽シーズンには5人程度に増えるという。独自に製作した外国人向けパンフレットを配り、国内の交通ルールを周知している。ただ、旅先でトラブルが発生した際は、対処法を説明しても言葉が通じず意思疎通が難しいという。
こうした現状を受け、県警は11日、日本の基本的な交通ルールを英語、中国語、韓国語などで紹介するリーフレットを県レンタカー協会に計800枚配布した。郡山市で開かれた協会総会の席上、佐久間正和交通部統括参事官兼交通企画課長が橘内貫二会長にリーフレットを手渡した。橘内会長によると、多言語での対応に困難さを抱えている会員もおり「外国人が交通ルールを正しく理解できるような取り組みが欠かせない」と話した。
外国人受験者の増加を受け福島運転免許センターは昨年から、外免切替の手続きをこれまでの日本語、英語、中国語に加え、20の外国語に対応している。予約を受け付ける際は、受験者に通訳者を同行させるよう依頼するなど工夫を重ねている。■県内在住外国人
ルールの違い多数、運転慎重に
2022年にインドネシアから来日したイドハル・スフィさん(24)=下郷町=は11日、外免切替のため福島市の福島運転免許センターを訪れた。農業に従事し、生活する上で車の運転が欠かせない。だが、この日の技能試験では赤点滅信号で一時停止するかどうか迷った末、完全に停止せずに直進してしまった。3度目の挑戦だったが試験を通過できなかった。「日本の交通ルールは細かくて難しい」と語った。
フィリピン出身の高橋ジョアンさん(50)=福島市=は、20年ほど前に外免切替で、日本の運転免許証を取得した。日本の道路は母国と比べ、1車線や一方通行が多いなど交通環境が異なると感じている。狭い路地に入らないなど、交通事故を避けるため慎重な運転を心がけているという。