福島のニュース
大阪・関西万博で始まった東北絆まつりを契機に、福島県内の踊り手や観光関係者は「福島への誘客につなげたい」と一丸で取り組む。今年は福島県を舞台にした大型観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」のプレ期間で追い風が吹く。会場内のPRブースでは14日、福島県ならではの発酵食や日本酒などを取りそろえ、関係者が「この夏はぜひ、福島に足を運んで」と呼びかけを強めた。
ワッショイ、ワッショイ。ラッセーラ、ラッセーラ―。それぞれの祭りのかけ声が会場に響き渡り、ぐずついた梅雨空の雰囲気を熱気とにぎわいで打ち消した。
福島わらじまつり実行委員会が万博に参加したのは東日本大震災以降、2015(平成27)年のミラノ万博に次いで2度目。全長12メートルの大わらじのパフォーマンスは雨で見送ったが、唄い手や担ぎ手の他、太鼓や笛を含めた本番さながらの布陣を組み、躍動的な福島の夏を届けた。小河日出男実行委員長は「元気な姿を見てもらうことが一番。それが復興の証しであり、東北に人を引きつける力になる」と強調した。福島市観光コンベンション協会のブースは県産モモを使ったジュースが人気で、来場者が列を作った。大阪府寝屋川市の主婦平松まゆみさん(61)は「モモのジュースはおいしく、わらじのステージも笑顔が印象的だった。翌日も見に行きたい」と笑顔で語った。
会津地方17市町村などで構成する極上の会津プロジェクト協議会(事務局・会津若松市)は、DCテーマの一つである「発酵文化」を掲げ、会津清酒やみそなどを物販し、歴史的な観光コンテンツをPRした。会津若松市内の東山、芦ノ牧温泉の2024(令和6)年の外国人宿泊者数は過去最多の2万5千人に上る。協議会事務局の担当者は「サムライ文化などを発信し、インバウンドをはじめとする観光客の取り込みに弾みをつけたい」と話した。■イベント周知課題
訪日客まばら
本紙記者会場ルポ
地下鉄の夢洲駅から最寄りの東ゲートをくぐり、東北絆まつり会場のEXPOアリーナ「Matsuri」までは徒歩で25分近くかかった。会場は反対側の西ゲートよりも先にある。大屋根リング内にある各パビリオンの行列ぶりに比べると、人通りは少ない。万博期間中、県内からも出展が相次ぐが、高い効果を求めるならば、誘導の工夫やイベントの周知が必要になるだろう。
国際博覧会の場にもかかわらず、外国人の姿はテーマパークや観光地よりも少ないように感じた。インバウンド(訪日客)の誘客につなげたい狙いもある東北絆まつりの出展関係者は「1割いるか、いないか」とみている。2024(令和6)年の県内の外国人延べ宿泊者数は34万人で、国内全体の0・2%程度だ。東北全体でも1%余りで、2024年1月以降、月別の最多人数を更新しているが、三大都市圏に集中する傾向は根強い。東北運輸局は「(東北地方は)観光コンテンツが豊富で、まだ伸びしろが十分にある」とみる。
14日は土砂降りの中でも、まつりのステージには見物客が詰めかけた。ドイツ出身で来日7年目の会社員パスカル・ボイニンゲンさん(48)=京都市=は「東京や京都に比べると知名度は低いが、東北の習わしや祭りは外国人にとっても魅力的だ」と語った。東北が一つになり、さらなる情報発信に努めてほしい。(本社報道部・堀田一真)