少子化を生きる ふくしまの未来 第8部「困難の先に」(2) 官民連携(下) 性別役割を見直す

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少子化を生きる ふくしまの未来 第8部「困難の先に」(2) 官民連携(下) 性別役割を見直す

福島のニュース


兵庫県豊岡市は少子化を招く女性の流出を抑えるため、ジェンダーギャップ(男女格差)の解消に向けて企業と連携してきた。2021(令和3)年3月には「ジェンダーギャップ解消戦略」を策定。性別役割分担に基づく仕組みや慣習を見直す必要があるとの考えから自治組織や学校、家庭に働きかけを広げ、まち全体の意識を高めようとしている。■意識付け、地域や学校で
戦略の狙いは、地域活動や家庭内の家事などを巡る「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み・偏見)」への気付きや、「固定的な性別役割分担意識」の解消だ。有識者を交えた啓発に力を入れている。
行政区(自治会)や地域コミュニティ組織向けには区長、役員らを対象とした研修やワークショップを開催。教育面では保育士や幼稚園教諭、小中学校の管理職や教職員、中学校の生徒会への研修の機会を設けている。幼少期からジェンダーや多様性を学ぶ教材として、コウノトリを用いたオリジナル絵本を各校・園などに配布している。
変化は少しずつだが、出始めている。区長連合会の会合では、ある行政区から、男女の役割分担に関するやりとりが紹介された。
秋祭りの「だんじり」で休憩所の接待役を担ってきた女性たちからみこしの担ぎ手となる男性側に対し、運営の簡素化を願う声があった。
区長は「ここで育つ子どもたちが『将来も暮らしたい』と思える地域にしたい」と在り方を見直す考えを報告した。また、市の呼びかけを機に防災体制を再検討。女性は炊き出しなど「補助的役割」に位置付けられてきたが、自主防災委員会の委員5人のうち、2人を女性枠に割り当てた。
少子化・人口減対策として、男女格差を改めようとする試みは、富山県南砺市や宮城県気仙沼市など各地に広がっている。「東京一極集中」の是正を目指す政府も13日に閣議決定した2025年版男女共同参画白書で、地方に根強い「固定的な性別役割分担意識」を解消する必要性に言及した。
ただ、豊岡市も足元の少子化や人口減に歯止めをかけるには至っていない。男女が共に支え合い、出産や子育てがしやすい社会をつくるのには時間がかかる。市多様性推進・ジェンダーギャップ対策課の原田紀代美課長は「行政として『気付き』と『対話』の機会を提供していく」と活動を続ける意義を強調する。
ワークイノベーション推進会議で共同代表を務める豊岡商工会議所の岡本慎二会頭(67)は「人が住んでこそ事業が成り立つ」との思いで多くの役職を引き受け、地域と関わっている。豊岡も、商用でたびたび訪ねる福島県も含めて地方は厳しい状況とした上で「少子化は何かをすれば、すぐに成果が出るものではない。経済界を含め、幅広い人々が関わらなければ変わらない」と指摘。一人一人が自分事として向き合うべき問題だと訴えた。