少子化を生きる 第3部「困難の先に」(3) 機能集約 復興機に町を再編 新市街に若年層流入

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少子化を生きる 第3部「困難の先に」(3) 機能集約 復興機に町を再編 新市街に若年層流入

福島のニュース


宮城県山元町は同県南部の太平洋沿岸に位置する。南隣の福島県新地町など浜通りと同様、2011(平成23)年3月の東日本大震災で津波に見舞われた。町域の約4割が浸水。関連死を含め637人が犠牲となった。復興に向け、人口減・少子高齢化という震災前からの課題解決に対応した、新たな視点でのまちづくりにかじを切った。
被災直後から近隣の亘理町や岩沼市に移る人が相次いだ。集落が点在したまま水道や道路などインフラを単に復旧しても、問題の根本的な解決には至らない。同年12月に定めた復興計画で、防災・減災に加え都市機能を集約する「コンパクトシティ」を旗印とした。
整った街並みや手厚い支援策が若い新住民に支持され、近年の社会動態は転入超を示す。町企画財政課の伊藤和彦企画班長(49)は「まいてきた種がようやく実を結びつつある」と手応えを口にする。
最初に着手したのは、沿岸部の6行政区の移転再建だ。急増する高齢者の孤立の抑制やコミュニティー活動の活性化、町外からの移住・定住の促進に狙いがあった。仙台圏に通じるJR常磐線の内陸移設に伴い、①新山下駅周辺(つばめの杜地区)②宮城病院周辺(桜塚地区)③新坂元駅周辺(町東地区)―の3エリアに新たな市街地を整備。鉄道駅付近などに490戸の復興公営住宅を被災住民に提供した。分譲宅地251区画も設けた。
つばめの杜地区の中心部には小学校、こどもセンター、公園といった子育て関連施設を整備し、スーパーなどの利便性を高める施設を誘致した。新婚・子育て世帯に「県内最高水準」とうたう最大370万円(現在は同300万円)の移住・定住支援補助金を創設。結婚から妊娠・出産、子育て・教育に至る切れ目ない支援策の充実を進めた。
補助金の申請者は30代が最も多く、転入数と転出数の差「社会動態」は2016~2024年度の9年間で83人、2024年度で66人の転入超となっている。
つばめの杜地区の公園は週末は、家族連れでにぎわう。16日、次男(5)と自転車の練習に来た会社員男性(36)は2年前に公園まで車で5分ほどの場所に家を構えた。「学校や保育所が整い、住みやすい」と地域の好印象を口にした。
ただ、3月末時点の人口は約1万1400人と震災前から約5千人減少。高齢化率は4割を超え、県内35市町村で4番目に高い。ここ5年間の出生数は緩やかに減り、少子化や自然減を止めるには至っていない。
それでも、町は民間組織「人口戦略会議」が昨年4月に示した分析で「消滅可能性自治体」を外れた。11年前の同様の分析では、消滅の可能性を指摘されていた。伊藤班長は若年女性(20~39歳)の増加などが改善につながったとした上で「大胆な策を講じなければ現状はより深刻だったのではないか」との見方を示す。