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あぶくま信用金庫(本部・福島県南相馬市)は東日本大震災に伴い、国から注入を受けた公的資金200億円を2026(令和8)年2月に一括返済する。16日、南相馬市で開いた総代会で決めた。公的資金を注入された県内3金融機関で一括返済に至るのは初めて。経営の健全性を示し、地域経済の振興に一層注力する。
同信金は東京電力福島第1原発事故に伴い、避難区域に入った6支店を一時休止。取引先への融資を回収できない事態に備え、2011(平成23)年度決算で貸倒引当金約53億円を積み増した。当期純利益は56億5500万円の赤字、自己資本額は前年度の86億9400万円から31億7700万円に減った。経営基盤を強化するため改正金融機能強化法の特例に基づき、2012年2月に金融庁と信金中央金庫から200億円を受け入れた。
取引先の事業再開や貸出金返済が進んだ2012年度に黒字に転じ、利益を出してきた。東電からの賠償などが貸し倒れを抑え、復興関連事業への投資の伸びも回復につながった。2024(令和6)年度決算では公的資金を除く自己資本額が177億8300万円に達した。公的資金を除いても自己資本比率が16・77%と経営の健全性を示す国内基準4%を大幅に上回り一括返済を決めた。
同信金は返済で財務状況の良さを示せば市場の信頼性が高まり、資金調達がより円滑になるとみている。中小企業や被災地への進出企業への資金提供を強め、地域経済の振興を金融面から支える。
総代会に一括返済に関する議案を提出し、承認を得た。太田福裕理事長は「公的資金により震災と原発事故後も安定経営ができた。今後も地域経済の発展につながる業務に努める」と話している。
震災に伴う信金への公的資金注入はあぶくまをはじめ、宮古(岩手県)、気仙沼、石巻(宮城県)の4信金に行った。当初10年以内とされた返済計画の策定期限は復興の遅れなどを踏まえて4年延長し、2026年までとなっている。■県内2信組、返済至らず
県内の金融機関では相双五城信用組合(本部・相馬市)が160億円、いわき信用組合(同・いわき市)が200億円の公的資金を受け、返済には至っていない。相双五城信組は2月に2048年までに利益を積み上げて返済する特別経営強化計画を公表した。いわき信組も特別経営強化計画を策定し、来年1月までに国の認定を受ける必要がある。