見えぬ備蓄米効果 福島県内価格は変わらず 小売店、値下げに慎重 仕入れ値高く他店様子見

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見えぬ備蓄米効果 福島県内価格は変わらず 小売店、値下げに慎重 仕入れ値高く他店様子見

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農林水産省が16日発表した随意契約による備蓄米放出後のコメ5キロ平均価格は福島県内で大きく変動せず、狙いの一つとなった値下げ効果が十分に波及していないことが明らかになった。全国的に卸売間の取引価格は下落するが、県内の小売業者は「まだ価格に反映できていない」としており、他店の動きを様子見していることなども影響しているとみられる。専門家は県内での効果は「まだ限定的」と評価した上で、適正な価格設定を目指した国の後押しの必要性を指摘する。
運営するスーパーでいち早く随意契約による備蓄米を販売したマルト(いわき市)の中岡店の棚には多くの銘柄米が並ぶ。価格は備蓄米放出後も大きく変えていないという。担当者は「例年より高い価格で仕入れたコメをすぐに安価で販売することは難しい」と据え置く理由を説明する。ただ、高値が続く銘柄米に若干の買い控えが起きているという。「備蓄米の流通がさらに広まり、秋には新米が売り出されるのを見越してなのかもしれない」と分析するが要因はつかみ切れない。複雑になっている消費者の購買動向を今後も注視し対応を決める考えだ。
県内の他のスーパーも値下げに関しては慎重だ。同じく備蓄米を先行的に販売したリオン・ドールコーポレーション(会津若松市)も銘柄米の店頭価格に変化はない。「現時点で今後の価格動向は見通せない」としている。相双地区と宮城県でスーパーを展開しているフレスコ(相馬市)も同様の方針で、担当者は「今は様子見の段階だ」としている。ヨークベニマル(郡山市)も既に仕入れた商品は価格を変えない方針だ。
「仕入れ値が下がらず販売価格の値下げはできていない」とするのは福島市の佐久間米穀店だ。随意契約の備蓄米放出後も把握している限りは銘柄米の卸値は変わっていないという。市内の別の米穀店は、高いままのコメに消費者の手が伸びていない状況を踏まえ、在庫を店に置かず、買い求める顧客がいる場合のみ卸売業者へ取りに行く従来にない対応を取っている。
一方、県内の卸売業者によると、価格の変動の兆しは見え始めているという。県内に本社を置く卸売業者によると、備蓄米の放出前後で卸間取引の「スポット価格」は全国的に1俵(60キロ)当たり5万円から3万円ほどに下落しているという。ただ、「高い仕入れ値で買ったコメを安く売れば、赤字が出てしまう」と既に出回っているコメの価格低下は難しいとの見方を示す。■「価格のバランス必要」専門家
農業経済学が専門の弘前大農学生命科学部の石塚哉史教授は「高止まりが続けば消費者が困り、安くなり過ぎれば生産者側の意欲に関わる」と指摘する。「政府は消費者、生産者の双方が納得のゆく形で需要と供給の価格バランスを取るべきだ」とし、価格補償など生産者への支援策を提案する。