少子化を生きる ふくしまの未来 第8部「困難の先に」(5) 脱「消滅」 移住者増加に活路

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少子化を生きる ふくしまの未来 第8部「困難の先に」(5) 脱「消滅」 移住者増加に活路

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日本有数の豪雪地帯である奥会津地域。伝統の祭りの中止やスポーツ少年団の減少など、子どもの数が減り続ける影響は、暮らしのさまざまな分野に広がっている。
金山町は令和に入り、14歳以下の子どもの割合が福島県内で最も低い4%台で推移する特に厳しい状況にある。2050年には人口が現在の半数以下の715人まで落ち込むと推計される。民間組織の「人口戦略会議」が昨年公表した「消滅可能性自治体」に含まれるなど、少子化は今や自治体の存続にまで及ぶ深刻な問題となった。
ただ、近年は「脱少子化」に向けた明るい兆しも見えている。生産活動の中核となる15歳から64歳までの人口は1月時点で613人となり、町が総合戦略で掲げた目標を63人上回った。町企画課の担当者は危機感を持った地域の取り組みが着実に実を結んでいると強調。増え始めた若い世帯が子どもを持つことで、2050年に千人の人口規模を維持できる可能性が出始めたと期待を抱く。■国は町村と一体の施策を
光明となっているのは活発化する移住者の動きだ。町内に約300軒ある空き家の利活用に向け、空き家バンクなどの施策を打ち出したのを契機に移り住む人が増えつつある。「JR只見線で町内を訪れた際に豊かな自然に魅了された」「古民家に住んでみたいと一念発起した」など理由はさまざまという。
地元企業の協力を得た交流会なども追い風に、近年の移住者数は年間で平均十数人と従来を超える規模となっている上、転入数が転出数を上回る状況が続く。山間部にある太[た]郎[ら]布[ぶ]地区では移住者夫婦の間に、集落で52年ぶりとなる女児が生まれた。地域を支える次世代の芽が育まれる明るい話題も出ている。
「町全体で子どもの健やかな成長を見守ってもらえる」。家族5人で暮らす緑川葉子さん(39)は町内の魅力を語る。11年前に結婚を機に移り住んだ。子どもを3人産み、育てる決め手となったのは、幼児から高校生まで切れ目なく子育てを支える町の施策だ。恵まれた環境を多くの人に知ってもらえるよう願う。
町は最新の総合戦略で定着や帰還だけでなく、都市部からの移住も柱に据えた「支え合う町」を掲げる。出身地に関係なく、若者から高齢者まで幅広い層が活躍できる地域を理想とする。
「町の魅力を広く売り込む好機を生かしたい」。押部源二郎町長は来秋の国道289号八十里越区間の開通を見据えた施策を思案している。新潟県と奥会津を結ぶ道路の完成によって生まれる新たな人の流れを追い風に、関係人口の創出や移住・定住の促進を目指す。
ただ、町単独の取り組みの限界も感じている。後押しを担う国の姿勢について「東京一極集中の是正を繰り返すだけで焦点が定まっていない」と厳しい見方を示す。「職員を各町村に配置するなど文字通り一体となって知恵を出し、支援策を打ち出してほしい」と踏み込んだサポートを注文する。