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福島県内最大の美術公募展・第79回県総合美術展覧会(県展)の受賞者が19日付で発表され、最高賞の県美術大賞に棚倉町の無職松本健さん(80)の洋画「約束」が選ばれた。塙町の石川支援学校高等部1年石川晃聖さん(15)=ペンネーム・KO☆(コウセイ)=の洋画「BOKU―NOTE
2025」が支援学校の生徒として初となる佳作を受けた。■松本さん65歳で再開し念願
大賞の松本さんは、半世紀にわたり独学で絵を描き続けており、長年の努力の積み重ねが、県内美術界最高の栄誉に結びついた。
棚倉町で生まれ育ち、自動車整備業を営んでいた。30歳の時に知人から町内の絵画クラブに誘われ、筆を持った。洋画を中心に人間の心や精神的な部分を表現してきた。趣味程度で始めたが、徐々に描くことの楽しさに魅了され没頭した。
孫は女子プロゴルファーの蛭田みな美さん(27)=鮫川村=。小中高校時代にゴルフ練習や遠征などの送迎をしており、絵を描けない時期もあった。しかし、努力するみな美さんの姿を見て「自分も頑張って、もっと絵がうまくなりたい」と奮起。65歳で再び筆を握り本格的に制作活動を再開した。10年ほど前から毎年、県展に出品して、念願の受賞となった。
受賞した作品の「約束」は人間の心の中にある約束の大切さを描いた。時計は文字盤が長く続いており、約束はいつまでも続くという意味を持っているという。長い時で1日4~5時間キャンバスの前で試行錯誤を繰り返し、構成から完成まで約1年かかった。洋画の部・審査主任を務めた画家で元郡山女子大短期大学部教授の浅野アキラさん(66)=郡山市=は「メッセージ性が強く、構図が洗練されている。80歳という年齢を感じさせない新鮮さがある」と語った。
松本さんは「絵は一生の勉強。努力し続けることが大切だ。残りの人生も絵を描き続けたい」と飽くなき探究心をのぞかせた。■石川さん興味と挑戦結実
佳作の石川さんは幼い頃から特定の事柄への強いこだわりや感覚過敏があった。絵にも興味を持ち続け、家族とドライブに行ったときに車窓から見た標識やポスターをよく描いていた。
絵は鉛筆やクーピーで決まったスケッチブックに描いていたが、小学6年生でドングリマン絵画造形教室(会津若松市)に入ってからは水彩画や立体にも挑戦。母信子さんは「対話が苦手な息子にとって、絵は自分の思いを伝える『言葉』だと思う」と話す。佳作を受けた「BOKU―NOTE(ボク
ノート)2025」は描きためた複数の絵を再構成して配置した。
受賞の感想など質問への回答を紙で用意してくれた。今後の目標の欄には「いろいろな作品を作って、見てもらいたいです」と自筆で思いをつづっていた。■26日に開幕
パルセいいざか
県展は26日から29日まで福島市飯坂町のパルセいいざかで開かれる。
日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門に627点が出品された。会場では入賞・入選した公募作家の作品330点と過去の県展で顕著な実績を残した委嘱作家らの作品62点が展示される。
県、県教委、県美術家連盟などの主催。入場無料。時間は午前9時30分(初日は午前10時)から午後7時(最終日は午後4時)まで。問い合わせは県文化振興課へ。