開戦前夜 ふくしま参院選(上) 自民「農業票」悩む距離感 公明苦慮 どうなる推薦

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通常国会は22日に会期末を迎える。7月3日公示、20日投開票が想定される参院選の前哨戦は熱を帯びる。昨秋の衆院選で過半数割れに追い込まれた与党が参議院で過半数を維持できるのか、野党が伸長するのか。鍵を握るのは福島県を含め全国で32ある改選1人区だ。コメなどの物価高対策が主な争点となる見通しで、政党や支援団体はどんな戦略で夏の陣に臨むのか。開戦前夜の動きを追った。(敬称略)

自民党の現職森雅子は21日夜、相馬市で開いた自らの総決起大会に間に合わなかった。国会で野党7党が提出したガソリン税の暫定税率廃止法案を巡り、異例の土曜審議が長引いたためだ。決起会場の相馬市総合福祉センターでは急きょ、夫で弁護士の三好豊が代わりにあいさつし、森の議席死守に向け支援者らに力添えを求めた。
自民は昨秋の衆院選で県内四つの小選挙区のうち一つしか勝てなかった。比例東北での復活を含めても公示前の5議席から2議席に減らした。党派閥の裏金問題による逆風は想像以上で、厳しい審判が下った。
今回の参院選で雪辱を期している。閣僚経験のあるベテランを落とすわけにはいかない。党本部は福島県選挙区を重点選挙区の一つに位置付ける。公示前だというのに木原誠二選対委員長や小野寺五典政調会長ら党幹部が次々と福島県入りしている。県連会長の参院議員星北斗は「重点選挙区として勝つだけでなく、森雅子という1人のベテラン政治家が生まれ変わり、国民からの信頼を取り戻す選挙にしたい」と意気込む。







今回の選挙で大きな争点になりそうなのが「コメ」だ。小泉進次郎農相が高騰した米価の抑制と生産構造の抜本的な改革に次々と策を打つ。コメの緊急輸入の可能性にも言及した。自民党県連幹事長の矢吹貢一は支援者との会合や集会で寄せられる声から、小泉農相の一連の施策が一定の評価を得ていると手応えを感じている。
ただ、自民の大きな支援組織であるJAは不快感をのぞかせる。一連の改革が生産者やJAの頭越しに進んでいると映るためだ。JA関係者は農相に対する評価をあえて避け、「挑発には乗らない」と不敵に笑う。コメ問題を巡りJAは消費者から「悪者」と見られるようになったのではないか、との懸念も組織内でくすぶっている。自民を支援する姿勢は崩さない一方、政策を矢継ぎ早に進める農相との距離感に苦悩している形だ。
「農相の考え方は協同組合と合わないと思う。自由経済と規制緩和に向かおうとしているのではないか」。全国農協青年組織協議会の幹部は、小泉農相と面会した印象を明かす。自民と連携して農政を良い方向に導いていきたいとの考えは変わらない。ただ、「もう少し生産者の声に耳を傾けてほしい」との思いだ。
小泉農相就任後、わずかに追い風が吹き始めたと森陣営はみる。6月定例県議会会期中の19日、福島市鎌田の事務所で緊急の選対会議を開き、党県連の県議や後援者ら約30人を集めた。「米価高騰などへの政策対応などで風向きが良くなっているが、これは“ブーム”だと感じている。ブームが去れば状況は変わる」。総合選対本部長を務める党県議会議員会長の太田光秋は、組織の緩みを警戒し引き締めた。
党県連としても農業県の福島県で生産者の支持離れだけはどうしても避けたいのが本音だ。県連幹事長の矢吹は「党として、生産者と消費者の双方に寄り添った米価対策、農政を目指していることを丁寧に説明し理解を求めていく」と言葉に力を込める。







自民党と中央で連立を組む公明党は、昨秋の衆院選で自民派閥裏金問題の火の粉をかぶった。石井啓一代表(当時)が落選。県内の比例票は前回より2割減の約7万6500票で、目標の11万票には遠く及ばなかった。
党支持母体の一部からは依然として自民の「政治とカネ」問題へ厳しい視線が注がれている。党県本部の幹部は「自公が選挙協力する形に変わりはない」と強調する一方、21日時点でも森に推薦を出していない異例の事態となっている。裏金問題に関わった森への不満、反発が支持母体内で消えていない証左だ。
県本部幹事長の伊藤達也は「22日の都議選の結果を踏まえ、近く(推薦について)結論を出したい」としている。【福島県選挙区(改選)立候補予定者】(21日現在、敬称略)森雅子


60
自民

元法相石原洋三郎
52
立民

元衆院議員小山田友子
32
共産

党県常任委員大山里幸子
51
参政

会社役員越智寛之

51
諸派

会社役員