信夫山から健康の頂へ 拠点整備し講座、相談も 福島市育ちのIT企業会長・金子哲司さん

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信夫山から健康の頂へ 拠点整備し講座、相談も 福島市育ちのIT企業会長・金子哲司さん

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福島市の信夫山に今夏、健康づくりに役立つ新拠点「しのぶ山テラス」が誕生する。千葉県のIT企業で会長を務める福島市育ちの金子哲司さん(74)が約10年間空き家だった実家を建て替え、老若男女が集う憩いの場に生まれ変わらせる。豊かな自然に恵まれた立地を生かし、心身共に健やかに過ごせる場にする考えだ。「原点は福島。恩返しをしたい」。運営に協力する地域の仲間の力も得て、思いを結実させる。
県立美術館の裏手にある信夫山の麓で自然に調和したテラスの新築工事が進む。2階建てで延べ床面積は約160平方メートル。展望テラスからは市街地の景観を楽しめる。美術館周辺には若者が集うカフェや文化施設などが立ち並ぶ。今回、住民の健康増進に重点を置いた施設が完成すれば、信夫山周辺に新風を吹き込む。金子さんは「幅広い世代が気軽に集まれる場になればいい」と願う。
金子さんは伊達市で生まれ、高校卒業まで信夫山にある実家で暮らした。大学進学後は埼玉県や千葉県などで生活してきたが、東日本大震災を機に故郷への思いが強くなった。原発事故の被害を受ける古里の姿を目にし、復興の力になりたいという熱烈な思いが込み上げた。その決意を抱き続け、目を付けたのが空き家になっていた実家だった。地域に開かれた場をつくれないか―。活動の構想に賛同してくれた地域住民や医療、市民団体などの仲間の輪が少しずつ広がっていった。昨夏、「しのぶ山テラス株式会社」を設立。工事を進めながら、2カ月に1度定例会を開き、事業展開を練ってきた。
脳出血の後遺症で言語障害や右半身まひがある。健康のありがたさを実感している。県内で生活習慣に関する指標が他県に比べ悪いことなどから、健康づくりを活動の軸の一つにすることを決めた。福島医大の高橋仁美特任教授に協力を仰ぎ、子どもから高齢者までが健やかな体づくりを考える取り組みを展開する。無理なく体を動かす体操や健康講座を催す他、健康についての個別相談に応じ、息苦しさや体の負担を感じにくい「ナノミスト低温サウナ」を使った健康増進に取り組む予定だ。テラス近くの山林は遊歩道に改装している。信夫山の木漏れ日の中で散策を楽しみ、体の機能が衰えた人らのリハビリに使ってもらう計画も練る。
将来はネイルサロンや学習塾の開催場所、民泊施設などとして、健康事業以外にも幅広く活用できるよう検討している。太陽光発電を生かしエネルギーの自給自足を進め、テラスに集う人々が利用できる地域通貨導入なども検討している。
テラスには高橋特任教授らが常駐し、将来は金子さんも長い時間を過ごすつもりだ。「みんなでつくり上げる場にしたい」。金子さんは信夫山の麓に人々の元気な声がこだまする日を心待ちにしている。