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福島市は7月1日、果物の観光農園や直売所が立地できる対象エリアを広げ、取り扱える品目の制限をなくす。夏秋のモモやナシだけでなく、冬春のイチゴなど果実全般の直売や加工品販売、収穫体験が可能になる。新規就農者や若手後継者の事業拡大や参入を後押しする。四季折々の採れたての果実を呼び水に年間を通じた誘客につなげ、フルーツ王国ふくしまの魅力を高める。木幡浩市長が26日の定例会見で発表した。現行の開発許可制度の運用を始めた2001(平成13)年5月以降、立地基準を見直すのは初めて。
開発を抑制する市街化調整区域内で一定規模の観光農園を開発するには、都市計画法に基づく制限がある。これまでは市内北西部の県道上名倉飯坂伊達線(フルーツライン)、県道福島吾妻裏磐梯線(スカイライン)、国道13号、国道115号の4路線に接するのが条件だった。今回の立地基準の見直しで果樹地帯を走る8路線を追加し、市内北東部の湯野、瀬上、鎌田地区、北西部の在庭坂、荒井地区などが新たに加わる。全路線から半径1キロ圏内の土地を対象とする。
これまでの対象品目はサクランボ、モモ、ナシ、ブドウ、リンゴの五つだったが、イチゴやブルーベリーなどを含む果実全般に広げる。近年はイチゴの県オリジナル品種「ゆうやけベリー」を手がける生産者が増えている。
全国有数の果物産地として知られる福島市で、特産物の果物や果樹園は重要な観光資源となっており、市は多彩な果実や特色あるスイーツを農園や直売所で提供してもらい、県内外からの誘客拡大と市内への回遊につなげたい考え。新規就農者や若手後継者らの生産意欲を高め、販路拡大による所得増を目指す。
市によると、市内には現在35カ所の観光農園がある。2025(令和7)年度の市内の新規就農者数は53人で、市が統計を開始した1975(昭和50)年度以降では過去2番目に多く、果樹の生産を手がける割合が半数近くを占めた。
市内の観光農園入場者数は【表】の通り。コロナ禍の前は年間8万人前後で推移していたが、2023年度(6月~11月)は5万3098人。一方、インバウンド(訪日客)は好調で、昨年の外国人延べ宿泊者数は過去最高の3万2802人だった。
木幡市長は会見で「(規制の緩和で)観光サービスの充実につなげ、福島を楽しんでもらいたい」と述べた。市観光農園協会長の佐藤孝さん(61)=くるま農園=は「生産者が高齢化している中で観光農園の門戸が広がれば、新規就農の動きが活発化する」と期待を込めた。
新たに観光農園や直売所を立地するには引き続き、市の開発許可や建築許可が必要になる。事務手続きは一般に数カ月かかり、農地転用が必要な場合もある。