福島のニュース
観光資源を磨き上げ、人気の続く地へ―。福島県金山町でJR只見線を活用した新たな旅行商品開発や奥会津連携などにより集客を図る動きが本格化する。2022(令和4)年10月の只見線全線再開通の影響などから観光客数が増えたが昨年、減少に転じた。「再開通効果を一過性のもので終わらせてはいけない」。強い危機感から町は今春、観光プロデューサーのポストを新設。JR職員として長年、旅行観光業に従事した町出身の横山伊久雄さん(64)を助っ人として迎えた。にぎわいのある町づくりへ新たな挑戦が始まる。
県内唯一のヒメマスの生息地沼沢湖、只見川を和船で渡り豊かな自然を堪能する「霧[む]幻[げん]峡[きょう]の渡し」、森の中にひっそりと立つ妖精美術館、大塩や玉梨といった温泉。それに赤カボチャや天然炭酸水などの特産品や住民の温かさ―。町内は魅力にあふれる。
町の観光客数は全線再開通翌年の2023年は28万531人で、前年から約1万8千人増加した。だが、2024年は24万8522人と約3万2千人減った。来年には大型観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」の本番を迎える。只見線を活用し、多くの人に町を訪れてもらうための魅力的な旅行プランの造成を目指す。
横山さんは川口高出身。国鉄に入社し、会津宮下駅や広田駅で働いた。JRではびゅうプラザの仙台団体旅行センター所長などを歴任した。只見高の選抜高校野球大会(センバツ)出場をはじめ、仙台市で開催されたバドミントンの国際大会など、さまざまな大型行事のツアー企画や人員輸送などを担った。
只見線全線再開通時はJR関係者として金山町で対応に当たった。地元住民の熱烈な歓迎を肌で感じ、胸が熱くなった。退職したら、いずれは金山に戻り何か貢献できたら―。そんな思いを抱いていたところ、町関係者から「力を貸してくれないか」と相談を持ちかけられた。生活の拠点は仙台市に置いていたが、Uターンして古里のために汗を流そうと決めた。
約40年ぶりに町に戻ると、改めて町が持つ魅力の素晴らしさに気付いたが、ポテンシャルを生かし切れていないとも…。「日本の原風景ならではの需要がきっとある」と可能性を感じている。「町外の人々に認知されるために資源を磨き上げ、観光客の誘導を促したい」と語る。現在、町の現状を確認し、より良い案を練っている。
横山さんは奥会津の沿線地域の連携が観光振興の鍵を握るとみる。「周辺自治体と手を取り、相乗効果を生み出したい。只見線をフックに、さらに観光客を動かす」と誓う。
押部源二郎町長は、町を離れていた横山さんだからこそ抱く“外側”からの視点が大切だと語る。「町の新たな挑戦のため、大胆で思い切ったアイデアを考案してもらいたい」と期待を寄せる。