福島のニュース
東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)として避難指示が解除された福島県浪江町末森地区で30日、小麦の収穫作業が行われた。町内の復興拠点で穀物が収穫されるのは初めて。農業の再興に向けた一歩を踏み出した。
町内の農業関連会社「テクノスジャパン」が地区内の農地約5ヘクタールで栽培に取り組んできた。昨年11月末に小麦の品種「ゆきちから」の種計約500キロ分をまき、順調に生育した。
30日の収穫作業はテクノスジャパンの社員や町内の加倉ファームのメンバーが臨み、コンバインを使って小麦を刈り取った。今後、脱穀作業を実施し、最大10トン程度の収量を見込む。放射線量の測定を経て、JAなどに出荷する。
末森地区は東日本大震災と原発事故発生前まで農業が基幹産業だった。現在は避難の長期化などにより営農再開が進んでいないのが現状だ。テクノスジャパン社員の山本幸一郎さん(57)は「小麦の栽培を通して、末森で再び農業をする人が少しでも増えていくきっかけになればうれしい」と前を向いた。