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JAふくしま未来(本店・福島市)は県北、相馬両地方で7~10月に収穫される夏秋キュウリを「マグナムキューカンバー」と名付け、ブランド化に乗り出した。曲がり具合など実の形によって市場価値が下がる課題に「逆転の発想」で挑む。夏秋期の都道府県別出荷量全国1位の産地の認知度アップ、生産者の収益拡大につなげる。「ふくしま夏秋きゅうりの日」と位置付ける1日、福島市の県観光物産館でお披露目を兼ねた発売イベントを催し、新たな試みをアピールした。
「おいしいですよ!手に取ってみて」。関係者が呼びかけると、買い物客がマグナムキューカンバーのラベルを貼った小袋に次々に手を伸ばした。
曲がりのある実を含む4本入りで、この日の価格はスーパーなどの小売価格と同等の150円に設定した。当初は県観光物産館で扱い、県内のスーパーや首都圏など県外への販路拡大を視野に入れる。JAふくしま未来の西幸夫常務は好評ぶりを見て「日本中で食べてもらいたい。キュウリで体を冷やし暑い夏を乗り越えてほしい」と意気込んだ。
キュウリは曲がり具合のほか、大きさ、色づき、傷の有無などにより、出荷段階で等級付けされる。同JAによると、B級以下となる割合は全体の約4割を占め、出荷時期や小売の需要によっても変動するが、1箱(50本)の市場での取引価格は形状のより優れたA級品と比べると、200円~400円ほど割安になるという。
同JAはB級以下の実でも味には遜色がない点に着目。等級の低い実や主に加工用に回っていた規格外品も含め、統一のブランド名で売り出した。曲がった実の「見た目」がマグナム(大型拳銃)に似ており、英語のマグナムには「特別」「大きい」の意味もあることからキュウリの英語名「キューカンバー」と合わせた。資材価格高騰などでコストが膨らむ中、出荷量と販売単価を高めて生産者の経営の安定化を図る。廃棄量を減らし、フードロス削減にも貢献する。
県北・相馬地方の12市町村を営業エリアとするJAふくしま未来のキュウリの年間販売額(3月~翌年2月)の推移は【グラフ】の通り。新規就農者の増加や大規模化などで右肩上がりが続く。2024(令和6)年産は約51億6千万円と初めて50億円を超え、県全体の販売額約100億円の5割超を占めた。夏秋野菜の主力品目に成長した一方、産地としての認知度が高まっていないとみてブランド化へかじを切った。
生産者からは消費拡大へ期待の声が上がる。170アールの畑で年間約10万キロを生産する二本松市の斎藤慎也さん(48)は全体の5~10%が曲がったり、育ち過ぎたりして地元の直売所や加工業者に割安で出荷している。一部は廃棄しているだけに「市場に出る実も規格外品もかける労力とコストは同じ。新しい名称が商品価値が高まるきっかけになればいい」と願う。