福島のニュース
東証プライム上場の機器製造メーカー、日東工器(本社・東京都)グループが福島市大笹生の福島おおざそうインター工業団地に新設した「おおざそう工場」が1日、竣工[しゅんこう]した。グループの将来的な基幹生産拠点と位置付け、機械工具や電動ドライバーなどを生産する。地元の雇用創出や地場産業との連携を目指す。
新工場はグループ会社の東北日東工器(福島市)が運営する。山形、白河両市にあった関連会社の2工場を移転・集約し、福島市内から新規採用した46人を含む200人体制で稼働した。最新鋭の機器や設備をそろえ、国内外の取引メーカーに幅広い製品を供給する。
建屋は鉄骨2階建てで、延べ床面積約2万平方メートル。「魅せる工場」をコンセプトに掲げ、周囲の山々に調和した外観とした。2階に製品を体感できるショールームを備え、地元の学校の見学学習や企業の視察などを積極的に受け入れる。地元でものづくりを志す若者の育成・定着への貢献を目指す。医療やロボット、水素分野を強みとする近隣の企業と連携し、高付加価値の技術を創出する考えだ。
日東工器の小形[おがた]明誠[あきのぶ]社長(70)は竣工式で「福島とともに工場を発展させていきたい」とあいさつした。工場の外観を設計した世界的建築家の隈研吾さん(70)、木幡浩市長が祝辞を述べ、関係者がテープカットした。見学会も開かれた。福島民報社から芳見弘一社長が出席した。
日東工器は1956(昭和31)年に設立。今年3月末時点のグループ従業員数は1052人。連結売上高は272億円。■「福島に明るい印象を」
外観設計の建築家
隈研吾さん
新工場は東北中央自動車道の福島大笹生インターチェンジ(IC)脇に立地し、曲面屋根が目を引く。外観の設計を担当した建築家隈研吾さん(70)は竣工式後、取材に東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興への貢献を念頭に「福島にポジティブで明るいイメージをつくれたらいい」と建物に込めた思いを語った。
―設計を担った経緯は。
「日東工器の小形社長とは学生時代から交友がある。『従業員が心地よく働き、誇りにつながる工場を』という依頼に共鳴した。工場を設計するのは初めてだったが、現地の視察を重ねる中で自然豊かな福島の景色になじむデザインにしようと思った」
―外観の特徴は。
「大笹生から望む山並みに溶け込むように曲線を多用した。屋根のひさしには県産のスギ材を使用し、外園には福島に自生する花木を置いた。高速道路を利用する方々の目線を意識した設計を心がけた」
―復興への思いは。
「『3・11』から県内の建築物の設計に数多く関わっている。地域が元気になってほしいと願っている。これまでの集大成となるような建物ができたのではないか」