【2025参院選 託す未来】生活支援最優先で 物価高 消費者目線の対策を

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【2025参院選 託す未来】生活支援最優先で 物価高 消費者目線の対策を

福島のニュース


長引く物価高に賃上げが追い付かない。政府の対策の効果が限定的と受け止める県民は多く、県内の子育て世帯や年金暮らしのお年寄りらは日常に窮屈さを抱え、将来に不安を募らせる。参院選の候補者の多くは物価高対策を最優先課題とし、現金給付や消費減税といった公約を掲げる中、有権者からは「生活の支えになる対策を急いでほしい」と求める声が上がる。








一人親たちを支援する地元の子ども食堂で、福島県郡山市の平野有理さん(28)が食べ盛りのわが子を見守る。病院事務の仕事に携わりながら、長女の結[ゆ]心[い]さん(8)と長男の悠[ゆう]羽[が]さん(7)の小学生2人を養うシングルマザーだ。終わりの見えない物価の上昇に対して政府は子育て世帯の支援も兼ねて対策を打ち出し続けている。だが、平野さん一家にとって恩恵はなかなか実感できず、6月下旬に子どもたちを連れて初めて施設に足を運んだ。
特に厳しいのは食料品の値上がりだ。5年ほど前まで3万円ほどだった1カ月当たりの食費は今では5万円近くに上る。元々の増加に加え、追い打ちをかけたのが米価の高騰という。政府の物価高対策の目玉の一つである備蓄米放出に期待はしたが、値段は大きく下がらなかった。育ち盛りの2人の子どもを考えるとこれ以上は食費を削れない状況で、値下げなど効果が早く出るよう気をもむ。
政府は電気・ガス料金の抑制も物価高対策の柱に据えている。ただ、前回の参院選が行われた3年ほど前に比べて毎月にかかるガス代は倍近くに膨らんでおり、効果は乏しいと感じる。
平野さんは各党の公約を見比べ、自らの生活に重ねる。物価の上がり幅を考えれば「1人当たり数万円の現金給付では少ない」と率直な受け止めを語る。長期的な減税もわが子を含む次の世代に多大な負担が生じるのではないかと心配する。「昔に比べて物価が上がりすぎている。子どもを育てる家庭に寄り添った施策を見極めたい」と一票を投じる先を思案している。
福島県南相馬市小高区の無職、牧野順四郎さん(84)も毎月の年金支給額と支出額を見比べ、やりくりに悩む。
普段の買い出しには自宅から車で15分ほどかかる市内原町区や浪江町に出かける機会が多い。ガソリン代の高騰で燃料代がかさむほか、スーパーで手に取る商品も値上がりを実感する。支給された年金から食費や光熱費、税金などを差し引くと、貯蓄に回せるのは月に1、2万円ほど。今後の体調面を考えると、医療費の支払いには不安もある。「生活必需品がもっと手軽に手に入るよう消費者目線の対策を充実させてほしい」と要望した。【物価高対策に関する政党の主な公約】◇自民生活支援で一律2万円を給付。子どもや住民税非課税世帯の大人に加算し1人4万円◇立憲民主来年4月から食料品の消費税率を0%に引き下げ。当面は1人当たり2万円を給付◇公明生活応援給付として1人2万円、18歳以下の子どもと住民税非課税世帯の大人に1人4万円◇日本維新の会食料品の消費税率を2年間、0%に引き下げ。ガソリン税の暫定税率を廃止する◇共産消費税率を緊急で5%に減税し、将来的に廃止。大企業や富裕層を優遇する税制の見直◇国民民主「年収の壁」178万円に引き上げ。ガソリン税の暫定税率廃止。消費税率5%に引き下げ◇社民食料品の消費税率0%を即時実現。米関税政策で影響が深刻なら食料品以外も3年間0◇参政消費税は段階的に廃止。所得のうち税金と社会保険料を合わせた割合を上限35%に抑える
3日公示、20日投開票で行われる参院選は、長引く物価高への対策、コメ価格高騰で揺れる農業の振興、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興など、県民を取り巻く諸課題への対応を託す選択の機会になる。有権者はどんな未来を願うのか。まなざしの先を追った。