福島のニュース
3日に公示された参院選は、猛暑の下で舌戦が幕を開けた。結果次第では政権の枠組みが変わり得る選挙となる。多くの政党や候補者が交流サイト(SNS)を発信手段として活用する中でも、選挙戦初日の集会や遊説には「生の声」に触れようとする有権者の姿が見られた。「政策や主張をしっかりと見極めたい」。政党や候補者の主張や政策の違いをどうくみ取り、何を基準に自らの一票を託すのか。経済政策や少子化、復興…山積する難題への、かじ取りを託す相手を見極める17日間が始まった。
3日夕、いわき市のJRいわき駅前で行われた街頭演説では、多くの仕事帰りの有権者らが詰めかけた。SNS上には各陣営が発信する政策や主張などの情報が飛び交い、判断基準となる材料があふれる。それでも、市内の会社員佐野寧稀さん(22)は「候補者の姿をじかに見て、熱量がより伝わってきた」と感想を口にした。南相馬市の会社員岡本義幸さん(46)も「実際に候補者に会い、話を聞いてみないと、投票先の判断がつかない場合もある」と足を止めていた。
一方、SNSは若年層を中心に情報伝達の手段として浸透している。県内の大学生でつくるNPO法人ドットジェイピー福島支部は5日と12日、インスタグラムへの投稿と街頭啓発を併せた投票呼びかけを福島市で展開する。日大工学部2年の吉田雅斗さん(19)=田村市=は3日、JR福島駅前で準備に当たり「SNSは若者にとって選挙を身近に感じやすく、政治参加につながる」と利点を語る。ただ、個々の関心や検索履歴により受け取る情報が偏りかねない点も頭に置き「さまざまな方法で正確な情報を収集する必要がある」と慎重さも口にした。
既存政党に加えて新興政党が存在感を増す中、各党の公約には経済対策など各政治課題について幅広い主張が並ぶ。柏屋運送(郡山市)社長の鈴木康則さん(57)は3日、各党や福島県関係候補の公約を新聞で改めて見比べた。燃料・資材費高騰の影響で社員約100人の賃金を思うように引き上げられていない。「経済全体の活性化につながるような論戦を期待したい」。厳しい業界の実情に即した政治を求める。
「政治とカネ」問題が尾を引く中、政治不信が解消されるかも焦点の一つだ。棚倉町の無職、藤田光子さん(76)は信頼回復の一歩として「課題に正面からぶつかってくれる人、政策を実現できる人を見極める」と話した。強い日差しとなった福島市で候補者の演説に耳を傾けた市内の主婦渡辺智枝子さん(79)は「掲げた公約はしっかりと守ってほしい」と注文を付けた。
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全県を舞台とした戦いとあって、米どころの会津地方や東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興が進む浜通りにも初日から選挙カーが入った。会津若松市河東町の農業長谷川泰道さん(42)は米価高騰を受け、生産者の収入の安定化や担い手の確保につながる政策を注視。富岡町観光協会相談役の滝沢一美さん(71)は「復興事業を今後も継続し、前進させてほしい」と願う。いわき市の自営業鈴木大介さん(54)は大学生と高校生のわが子の進路や将来の選択肢が広がる政策に目を向ける。