福島のニュース
「もうかる農業の実現などを先送りにし、生産者をないがしろにしてきた農政のツケが『令和の米騒動』につながったのではないか」。福島県会津美里町の農家横山大介さん(46)と長男雄飛さん(25)は、稲の育ち具合を確認しながらコメ政策に思いを巡らせる。
大介さんの父正治さん(72)と3世代で、町内と会津若松市にある水田合わせて約40ヘクタールでコシヒカリなど6品種を生産している。燃料、資材、肥料費の上昇に加え、100万円単位でかかる農機具の更新・修理費が悩みの種。効率を高めるため、日大工学部卒の雄飛さんがドローンを使う肥料散布の資格を取得。全国的に話題になっている、水を張らない田んぼに水稲の種もみを直接まき、省力化につなげる「乾[かん]田[でん]直[ちょく]播[は]」にも挑戦している。ただ、新たな機械や設備が必要でハードルは高い。大介さんは「生産コストの削減には限界がある」と打ち明ける。
政府は随意契約による早期の備蓄米放出、輸入の前倒しなどで米価の安定化に腐心。一時4千円を超えていた小売店でのコメ5キロの平均価格は4日の農林水産省発表で3691円まで下がった。価格が低下するとの先安観が強まっている。
一方、近年の高温や水不足などの異常気象はコメ栽培に甚大な影響を与えており、大介さんは「農家が安心して安定的に作れる仕組みを整えることが優先だ」と国内の生産体制強化に重きを置くよう訴える。多くの政党が公約に掲げる生産量増に対し、「簡単に増産と言うが、新たな機械や設備を導入しなければならない。補助金の充実なども併せて取り組んでほしい」と現場の声を代弁する。
雄飛さんは若者が生産者に憧れ、意欲を持てる農政に期待し、「農家の頑張りが報われる国になって」と願う。■水産業
漁業復興、具体策求む
中国は6月29日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に伴い停止していた日本産水産物の輸入を再開した。ただ、放出前から規制していた福島県など10都県は対象から外れたままだ。
福島県漁業は原発事故に伴う試験操業が終了し、本格操業へ向けた移行期間に入って4年が過ぎたが、他県沖での操業は今も一部を除いて再開には至っていない。
いわき市の小名浜機船底曳網漁協所属の漁師志賀金三郎さん(78)=第三政丸船主=は、東日本大震災と原発事故前に100トンを超えていた年間漁獲量が近年は70トン程度に落ち込み、水揚げ金額は約1400万~1700万円と発災前の約2割にとどまる。福島県沖だけでは資源が限られ、「一日も早く、原発事故前のように他県沖で操業できるようになってほしい」と望む。
参院選の公約には複数の政党が担い手の確保などを掲げているが、「具体性に欠ける」とみている。福島県漁業の新規就業者は近年増加傾向にあるものの、高齢化を理由に全体の従事者数は減少している。「外国人を含めた多様な人材の確保など、より具体的な施策を講じて」と求めた。