福島のニュース
手を繋[つな]いだら
明日が来る
高く舞い上がれ―。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を伝える絵本「きぼうのとり」の歌が誕生した。福島県塙町出身のミュージシャンつのだ☆ひろさん(75)が、被災後にひた向きに生きる子どもの姿を描いた物語に感銘を受け、作詩作曲した。「震災を風化させてはならない。長く愛される一曲になってほしい」と気持ちを込めて歌い上げている。
たくましく成長する子どもたちが、〈だれかの大切なきぼうのとり〉と結ぶ絵本に共感した。行方不明になった家族を心のどこかで待ち続ける人、懸命に前を見据え、今を生きる人たちの気持ちに思いをはせ、妻でマネジャーのつのだ♡えいこさん(63)と共に歌詞を完成させた。
曲は3分程度。誰もが歌いやすいようなメロディーに仕上げた。県内外の子どもたちや合唱グループのメンバーと一緒に歌ったり演奏したりする構想を胸に描く。全国の人に曲が届くよう、CD販売やインターネットでの公開など視聴方法を検討している。
つのださんが絵本「きぼうのとり」と出合ったのは、東京都品川区の城南信用金庫本店で数年前に開かれた報道写真パネル展だった。音楽を通して被災地の応援を続けており、震災と原発事故から来年で丸15年の節目を迎える。「曲を福島から発信し、世界中の人に届けたい」と決意した。
楽曲制作について聞いた県東京事務所長の国分健児さんは「県内の合唱グループや合唱部がある高校に関する情報を提供するなど、県内での楽曲の発信を後押ししていきたい」と語っている。
絵本「きぼうのとり」は2021(令和3)年に初版が発行された。福島民報社が震災と原発事故を風化させないために企画・制作した。
つのだ☆ひろ
1949(昭和24)年生まれ。中学生の頃にドラムを始め、高校生でプロデビュー。ジャズやロックといった幅広い音楽をこなす実力派アーティスト。代表曲は「メリー・ジェーン」など。清水健太郎さんの「失恋レストラン」の作詞作曲も手がけている。■きぼうのとり作詞作曲
つのだ☆ひろ空がある限り
翼ひろげ舞い上がる鳥は
未来を飛ぶ愛がある限り
人は強く一歩ずつ
ホラ
前に進む渡り鳥
故郷へ
飛び帰る
春がくる小さな影を
地上に残し真っ直ぐ進め
時空を超えて命ある限り
振り向かずに立ち直る為に
人は耐える自分の足跡
胸に刻み一歩ずつ
ホラ
今を生きる現実は
夢のように
薄れゆく
過去に滲むでもね、瞼を
閉じればいつも浮かぶあなたの
優しい瞳旅立つ見果てぬ
遠き国は懐かしい夢が
暮らす世界いつかは私も
訪れるだろう愛の言葉を
手土産に見上げる空には
希望の鳥どんな遠くにも
飛んでいける言葉は要らない
前を見つめ手を繋いだら
明日が来る高く舞い上がれ