福島県勢初の2冠、井戸(東邦銀行) 陸上日本選手権 女子200メートル初優勝

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陸上の世界選手権東京大会の代表選考会を兼ねた第109回日本選手権最終日は6日、東京都の国立競技場で行われ、女子200メートル決勝で井戸アビゲイル風果(24)=東邦銀行=が日本歴代5位で自己新記録の23秒18をマークし、初優勝した。5日の女子100メートルも制しており、福島県勢初の2冠を果たした。
井戸は5日の200メートル予選で自己記録タイの23秒49をマークし全体1位で決勝進出を決めていた。決勝はスタートからトップに立つと直線で後続をさらに引き離し、2位に0秒39差をつけた。
岐阜県美濃加茂市出身、至学館高、甲南大を経て2024(令和6)年春から東邦銀行に所属している。■福島から世界へ
新星圧倒の走り
他を寄せ付けない圧倒的な力を見せつけた。6日に東京都の国立競技場で行われた陸上の日本選手権女子200メートル決勝。井戸アビゲイル風果(24)=東邦銀行=は女子100メートル決勝に続く2冠を達成し、日本スプリント界にその名をとどろかせた。福島市でトレーニングに明け暮れたリズムを重視する走法を発揮。「自分の音だけを意識した」と独特な言い回しをして声を弾ませた。「福島から世界へ」の思いを胸に、世界選手権出場への一歩を踏んだ。■故川本氏考案「ポンピュンラン走法」意識
号砲とともに勢いよく飛び出した。力強く伸びやかなフォームからは、好調さをうかがわせた。見る見る相手を引き離し、コーナーを抜けると独走状態に。勝利を確信した最終盤では一瞬、表情を緩める余裕すらあった。ゴール後には両手で顔を覆い、喜びに浸った。
「やっとここまで来られた」。インタビューで顔をほころばせた。昨年の日本選手権では400メートルで3位と奮闘したが、本命種目の200メートルでは予選落ち。悔しさを糧に冬の練習に励んだ。
元東邦銀行陸上競技部監督の故川本和久氏が生み出した「ポンピュンラン走法」に活路を求めた。動作を擬音で表現し、感覚を習得するのが特徴。「ぐいぐい」と地面を押して加速し、地面からの反発を生かして「ポンポン」と弾む。「ピュンピュン」と脚をさばいて走る「ポンピュンラン」を徹底的に意識し、特訓を繰り返した。「忘れていた基本的な走り方を取り戻せた」と手応えをつかんだ。
チームメートの奮闘も力になった。この日のレース直前には男子400メートル障害で山内大夢(25)が2位と健闘。「すっごく励みになった」と振り返った。5日の100メートル決勝前には女子400メートルの松本奈菜子(27)が、けがの影響でメダルを逃したが、痛みを抱えながら最善を尽くす先輩の姿に気が引き締まったという。
今回の200メートル記録23秒18は、9月にある世界陸上で日本陸連が定める1600メートルリレーの候補競技者基準記録23秒19を上回った。「次は400メートルを走れる実力を示して、(世界陸上の)リレーメンバーに選ばれたい」とさらなる飛躍を誓った。
吉田真希子監督は「今持つ力からすると、120点」と大絶賛。「まだ粗削りなところはあるが、世界を見据えたマルチスプリンターになってほしい」と期待した。
根本寿実福島陸協会長は、女子100メートルの元日本記録保持者・二瓶秀子氏(福島大出身)や女子400メートルの現日本記録保持者・千葉麻美氏(矢吹町職員)に続く福島県の日本最高峰スプリンターの誕生に歓喜した。「福島県の高校生も、県総合スポーツ大会などで井戸選手と走れる機会がある。競技力向上に向け、良い刺激になる」とうなずいた。