【2025参院選 託す未来】人材確保実効策を 福島県外流出に歯止めかからず

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【2025参院選 託す未来】人材確保実効策を 福島県外流出に歯止めかからず

福島のニュース

■報酬差による流出懸念
賃上げ
急激な少子高齢化を背景に、生産活動の中心となる福島県内の生産年齢人口(15~64歳)は減り続けている。県内企業の多くが深刻な人手不足に直面している。参院選では各政党が賃上げに関する公約を掲げているが、地方の中小企業が実現するのは容易ではない。経営者からは実効性ある政策を望む声が上がる。
来春卒業予定の高校生向けの求人公開が1日に始まり、各企業は人材確保に向けた動きを本格化させている。白河市の総合建設業「三金興業」は県南地方の実業系高からの採用を目指しているが、地元企業への生徒の関心は今ひとつだ。より賃金水準の高い関東圏と接する地域だけに、副社長の金子善弥さん(39)は「初任給や福利厚生を考えると、県外の職場に目移りしてしまうのかもしれない」と懸念している。
物価高騰と実質賃金のマイナスが続く中、各政党は公約で「2030(令和12)年度に賃金の約100万円増を目指す」「最低賃金を時給1500円以上に引き上げる」などと主張する。ただ、金子さんの目には実現に向けた道筋が見えず、「どこか企業任せ」にしか映らない。
三金興業は役員を含めた働き手が35人の会社だ。人材確保には待遇改善が不可欠と考え、若年層の賃金を手厚くしている。2年前には「実を切る覚悟」で給与を据え置き、完全週休2日制を取った。それでも、高卒者の採用に至らない年もある。売り上げの7割を公共事業が占め、小規模工事を価格競争の末に落札しても、原材料費の高騰と併せて利益率の低下に跳ね返ってくる。報酬に回せる資金には限りがあるのが実情だ。
結婚や育児を控える20~30代が従業員の3分の1弱を占めるため、働き方改革にも心を砕く。2017(平成29)年に育児休業(育休)取得を促進する「イクボス宣言」を行い、短時間勤務の導入などを進めた。ただ、育休期間が工期間際の繁忙期に重なれば、残る従業員に業務負担が増す。金子さんは「地方の中小企業や各業界の実情に目を向け、企業が働き手を確保できるような支援策を示してほしい」と訴える。■男性育休の広がり必要
女性活躍
政府が女性の社会進出を促す中、福島県では進学や就職をきっかけとした若い女性の県外流出に歯止めがかからない。いわき市小名浜で不動産業「堀越商事」を営む堀越純子さん(58)は「女性が家事や育児で担う負担は依然重い」と語る。
母から2代続く女性経営者として社業を切り盛りする。4月には「いわき女性の会」会長に就いた。女性の社会参加の進展を感じる一方、社会の仕組みには不備が目に付く。象徴的な例が育休だ。県内の民間事業所で働く男性の育休取得率は昨年で43・5%と前回参院選のあった2022年の倍を超えた。ただ、大きな会社は取得する環境を整えられたとしても、従業員数の少ない中小・零細企業では難しいのが現実だ。
各党の公約には、性別役割分担を巡るアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の解消、男性の育休取得促進、産前・産後休業の拡充などといった項目が並ぶ。堀越さんは性別による役割の偏りをなくす必要性があるとした上で「実現が難しい課題だからこそ国民の声に耳を澄まし、行動に移す人に一票を託したい」と思いを口にした。