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東京電力は、福島第1原発5、6号機と福島第2原発1~4号機で貯蔵している使用済み核燃料の一部を青森県むつ市にある国内唯一の使用済み核燃料中間貯蔵施設へ搬出する方針を示した。東電の小早川智明社長が7日、青森県の宮下宗一郎知事と面会し、中間貯蔵施設への中長期搬入・搬出計画を提示した。使用済み核燃料は福島第1、第2原発の廃炉を安全に進める上での懸案となっており、搬出が実現すれば原発事故後初で、廃炉作業上のリスクが低減することになる。
東電によると、福島第1原発事故発生当時に第1原発の5、6号機と共用プール、福島第2原発の1~4号機にそれぞれ貯蔵していた使用済み核燃料は、通常の原発と同様に健全な状態で保管されており点検した結果、中間貯蔵や再処理が可能と判断した。一方、福島第1原発1~4号機の使用済み核燃料は事故発生時に保管していたプールに海水を注入するなど通常とは経過が異なるため、技術的な検討を続けるという。
宮下知事は面談終了後、記者団に「安全性が確認されることが前提だ」と指摘。事故のあった福島第1原発1~4号機からの搬入については「ないと思う」との見方を示した。
福島第1、第2両原発で保管されている使用済み核燃料は現在、合わせて2万1869体に上る。内訳は【表】の通り。第1原発の3、4、6の各号機は、今年4月までに使用済み核燃料の取り出しが完了しているが、いずれも構内での保管が続いている。
仮に東日本大震災級の巨大地震や津波などで全電源が喪失すれば、使用済み核燃料プールの冷却が停止するなどのリスクがある。こうしたリスクを低減するため東電は、建屋に残る核燃料を津波が到達しない高台の建屋に移す作業を進めている。原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志廃炉総括監(前原子力規制委員長)も「使用済み核燃料の取り出しは早急に取り組むべきことの一つだ」と述べている。
東電は7日の記者会見で「燃料は資源だ」とし、健全性が確認されれば核燃料サイクルを推進すべきだとの考えを示した。「さらに検討を重ね、最終的な計画を取りまとめる」とし、今後、搬出方法や時期などを具体的に検討するという。
福島県の県原子力安全対策課の三浦俊二課長は「福島第1、第2両原発の廃炉を進めるための取り組みの一つ」と受け止めた。
むつ市の中間貯蔵施設は健全な使用済み核燃料を金属製容器に入れ、自然風で冷やす「乾式貯蔵」を原発敷地外で行う国内唯一の施設。東電と日本原子力発電(原電)が共同出資で設立したリサイクル燃料貯蔵株式会社が運営し、東電と原電の原発から出た使用済み核燃料を六ケ所村の工場で再処理するまでの間、最長50年間保管する。昨年9月に東電柏崎刈羽原発(新潟県)の使用済み核燃料69体を国内で初めて受け入れた。
使用済み核燃料とは別に、福島第1原発1~3号機に計880トンあると推定される溶融核燃料(デブリ)の一時保管や県外処分の在り方は明確化されていない。