福島のニュース
福島県選挙区(改選1議席)に現新5人が立候補した参院選は、中盤に入った。自民党の現職森雅子(60)と立憲民主党の新人石原洋三郎(52)が激しく競り合い、参政党の新人大山里幸子(51)が追う展開となっている。コメの価格高騰をはじめとした物価高対策、企業・団体献金の在り方など「政治とカネ」の問題、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興、少子化・人口減少への対応などを争点に論戦は熱を帯びる。1議席を巡る各地の最新情勢をルポする。
自民党派閥裏金問題の影響が色濃く残るのが県北地方だ。昨秋の衆院選福島県1区で、党幹事長注意を受けた自民前職が立憲民主党現職に敗れて以降、後任となる1区支部長が決まっていない。県北地方での選挙戦を差配する「司令塔」の不在を意味する。
「力のある衆院議員を失ったのは痛手だが、危機感から逆に組織の結束が強まったとも言える」。森雅子(60)の陣営幹部は強調する。今週末には、都知事の小池百合子や元法相の上川陽子ら大物応援弁士を県北地方に招く。福島市鎌田の国道4号沿いにある選挙事務所で9日、準備が慌ただしく進められていた。
県北地方8市町村の有権者数は約38万人。6年前の改選時に森は約10万6千票を獲得し、野党統一候補に約1万7千票の差をつけた。今回は県北地方で11万票を目指す。3期18年で旧市町村単位に張り巡らせた支援組織を軸に、県議や市議の後援会、党支援・友好団体と一体となった組織戦を展開している。
ただ、法相や少子化担当相を歴任した森とはいえ、今回の戦いばかりは容易ではない。政治資金収支報告書の不記載で党の処分こそ受けなかったが、釈明に追われた経緯がある。「(昨秋の)衆院選後、自民から離れた支持者は少なくない」と選対関係者は明かす。逆風での苦戦を見越し、街頭活動を増やす戦略を取ってきた。
中央で連立政権を組む公明党の県本部は森への選挙協力を巡り、これまでのように推薦ではなく「強力なる心情的支援」にとどめた。政治とカネ問題を受け党支持母体でくすぶる不満、反発に配慮した格好だ。選挙協力関係は「これまでと変わらない」(公明関係者)と繰り返すが、自民県議の一人は「(森を)応援できない公明支持層は一定程度いる」と織り込む。
ただ、各種序盤情勢調査で森は、立民の新人石原洋三郎(52)の地元である県北地方でほぼ横一線。自民県連総務会長で福島市総支部長の佐藤雅裕は「県北地方でいかにして互角以上の戦いに持ち込むか。そこが勝敗を分ける」とみる。
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福島市議を5期目途中で辞した元衆院議員の石原にとって県北地方が地盤。昨秋の衆院選福島県1区では立民現職が約12万票を得て、自民前職を破った。政治とカネ問題を追い風に、地元で他候補に水をあけたいところだが、悩ましいのが共産党との距離感という。
「あくまで5者協議会の枠組みで戦っている。共産党関係者が出入りしているわけではない」。石原陣営の幹部は話す。福島市太田町にある選挙事務所に9日、立民重鎮の小沢一郎が激励に訪れた。福島県選挙区を重点選挙区に位置付ける立民が、党を挙げて攻勢をかける姿勢を前面に打ち出してみせた格好だ。
石原陣営は、昨秋の衆院選で立民現職が獲得した12万票を基礎票にしている。立民と国民民主、社民の各党県連、連合福島、県議会会派「県民連合」でつくる5者協議会の枠組みで支援を受ける。これに加え、党独自候補の擁立を見送った共産党県委員会は、石原への投票を党員らに呼びかけている。
立民県連の幹部は「野党候補者の一本化ではない」と否定するが、県北地方での得票目標は共産票の一部を当て込んだ14万票だ。昨秋の衆院選比例で立民、国民民主、共産が得た得票を足すと自公を上回る。ただ、共産が石原陣営に近すぎると、原発政策などを巡って反りが合わない国民民主などが離反する。その距離感に苦心している。
各種序盤情勢調査の結果を分析した陣営幹部は「国民民主支持層の一部が参政党や自民党などに回っている。地元(県北地方)で上滑りするわけにはいかない」と危機感をあらわにする。5者協の屋台骨で反自民・非共産を掲げる連合福島の幹部は「国民民主が離れないように共産とは一線を画したつもりだが、一定の票の流出は避けられない」と受け止める。
政治とカネ問題に端を発した追い風はやんでいないと陣営はみる。1区選対幹事長で県議の大場秀樹は「政権批判票を十分に取り込み、票の流出を抑える。(石原の)地元で大きく票を伸ばさないと勝てない」と表情を引き締めた。
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全国で急伸が伝えられている参政党は、県内の都市部を中心に党員、サポーターの数を伸ばしている。8日には党代表の神谷宗幣が福島市内でマイクを握り、新人の大山里幸子(51)にエールを送った。党県連会長の郡剛志は「4日に福島市で行った前回の演説より、聴衆は倍以上に増えている」と手応えを口にした。
政治団体「NHK党」の新人越智寛之(51)と無所属の新人遠藤雄大(40)は交流サイト(SNS)を軸に、支持を呼びかけている。■福島県選挙区立候補者(届け出順
敬称略)大山里幸子[おおやまりさこ]
51
参
政
新越智寛之[おちひろゆき]
51
諸
派
新森雅子[もりまさこ]
60
自
民
現石原洋三郎[いしはらようざぶろう]
52
立
民
新遠藤雄大[えんどうゆうだい]
40
無所属
新