【2025参院選 託す未来】防災 支援や備え強化を 財源、人手確保望む 福島県内では「共助」の動き広がる

  • [エリア] 本宮市 猪苗代町
【2025参院選 託す未来】防災 支援や備え強化を 財源、人手確保望む 福島県内では「共助」の動き広がる

福島のニュース


参院選が行われている夏は、台風などによる豪雨災害が起きやすい。東日本大震災をはじめ多くの災害に遭ってきた福島県内では、過去の教訓を糧に「共助」の動きが広がる。ただ、民間の自助努力には財源も人手も限りがある。有権者からは発災時の迅速で適切な支援、平時からの備えの強化を国に望む声が上がる。








「救援物資が早急に被災地、被災者に届く仕組みを整えてほしい」。本宮市第6区舘町行政区自主防災組織で本部長を務める浜崎光則さん(75)は気をもむ。
2019(令和元)年10月の東日本台風(台風19号)で本宮市街は阿武隈川の氾濫などで浸水し、7人が犠牲となった。脳裏にあるのは発災直後の避難所の光景だ。100人余りが身を寄せた体育館は簡易ベッドなどの備蓄が足りず、1人1畳ほどの硬い床に毛布を敷いて雑魚寝した。
昨年の能登半島地震もひとごととは思えなかった。現地から伝えられたのは隣の家族との仕切りもなく、毛布にくるまる人々の姿だ。「真冬の避難所は水害よりも過酷」と案じ、「4年以上過ぎても変わらない」とやるせなさを感じた。
気候変動に伴う災害の激甚・頻発化や南海トラフなどの巨大地震の発生を念頭に、各党の公約には「避難所の質の向上」や「速やかな寝具・風呂の配備」「宿泊施設の活用」といった避難先の環境改善をうたう文言が並ぶ。浜崎さんは過去の被害から得た反省をどこまで反映させられるのかに注目している。関連死を防ぐためにも「被災直後から安心できる避難所の在り方を真剣に考えて」と願う。
県や各市町村は国の交付金を活用し、簡易ベッドやトイレコンテナなどの充実を急ぐ。舘町行政区も新たな水害に備え、高台の空き家を防災倉庫や避難所として確保した。市の助成や自主財源で備蓄品をそろえているが、備えは万全とは言えない。「住民や自治体の力には限界がある」と国に対して財政支援の充実や円滑に避難所を運営できる体制づくりへの後押しも訴える。








平時からの防災に関する組織や人々の意識醸成も被害軽減の鍵となる。国は町内会などが主体となって災害時の対応を定める「地区防災計画」の普及を進めており、県や市町村が民間を支援している。ただ、県によると、運用開始10年に当たる昨年4月時点で計画をまとめ、市町村の「地域防災計画」に反映されたのは県内5市町の23地区にとどまる。
地区計画策定では住民間の合意形成が課題となる場合が少なくない。磐梯山麓にある猪苗代町の天鏡台温泉地区自治会もその一つ。会長の木本真[ま]理[り]究[く]さん(32)は「住民間で防災意識に温度差がある」と明かす。
自治会は水害や噴火に備えようと、2年前に地区計画作りに動き出した。別荘地という土地柄から74世帯のうち、週末や長期休暇のみ過ごす「二地域居住」が6割を占める。近所付き合いを望まない人もおり、打ち解けるのが難しい。来年の完成を目標に「下地」となる関係性を築こうと、交流会や防災訓練を重ねる。
各党の公約にも「計画策定の推進」「地域防災力の充実・強化」などの文言はある。木本さんは自助・共助の強化につながる計画の重要性を理解した上で国が先頭に立ち、幅広い国民が防災を自分事と捉えるための啓発に努めるよう望む。「防災意識が広まれば、計画作りは加速する。災害が起きてからでは遅い」と政治に危機感を促す。