福島のニュース
東京電力福島第1原発事故で福島県南相馬市に設定された居住制限、避難指示解除準備の両区域が2016(平成28)年7月に帰還困難区域を除いて解除されてから、12日で9年となった。残る帰還困難区域については、帰還を希望する1世帯の宅地など約3・7ヘクタールが特定帰還居住区域に設定され、避難指示解除に向けた道筋はついた。一方で、市人口の伸びは鈍化しており、市は新たな仕事を創出し移住・定住を呼び込もうと、基幹産業の農業への支援や次世代産業の誘致などに力を入れている。
全域が避難区域だった小高区の居住者は6月末で3829人。前年同期比で16人減った。ここ数年は3800人前後で推移しており、頭打ちの状態となっている。旧鳩原幼稚園に農業人材の確保・育成を目指す「みらい農業学校」を開校し、川房地区に育苗施設と加工施設を備えた園芸施設を整備する計画が進む。
地域に根付いた機械金属加工業を軸に、ロボットやドローン、宇宙関連産業への支援や企業誘致などを展開。市が昨年設置した宇宙関連産業推進室は、企業が実証実験で使える場所を提供し、各種手続きをサポートしている。ロケットの打ち上げ実験が行われた小高区井田川では、企業の開発状況次第だが今年も2、3回の打ち上げを予定。複数の企業からロケットエンジンの燃焼試験の打診があり、新産業創出への気運が高まっている。
門馬和夫市長は7日の定例記者会見で「これまで地域の強みを生かした産業誘致などに努めてきた。ロボットやドローン、ロケットなどをてこに、さまざまな業種を集め、産業の厚みを増したい」と話した。