ふくしま2025参院選 現地ルポ(3) 浜通り 懸案解消 復興で舌戦

  • [エリア] 福島市 相馬市 南相馬市 飯舘村 いわき市
ふくしま2025参院選 現地ルポ(3) 浜通り 懸案解消 復興で舌戦

福島のニュース


東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興は道半ばだ。福島県の浜通りでは生活環境の整備や産業再生への取り組みが進む。参院選福島県選挙区(改選1議席)に立候補した5人はそれぞれに復興施策を訴える。参院選を前に自民党は長年続いてきたいわき市長選での「保守分裂」を回避し、立憲民主党は昨秋の衆院選で浜通りを地盤とする党所属国会議員が誕生し「議員の空白域」を解消した。自民の現職森雅子(60)=いわき市出身=、立民の新人石原洋三郎(52)=福島市出身=は11日、互いをけん制するかのように浜通りに選挙カーを走らせ、舌戦を繰り広げた。■森陣営
地元市議の分裂回避
石原陣営
国会議員指揮で団結
森は11日、飯舘村などを遊説し、夜には南相馬市で南相馬・飯舘総決起大会を開いた。「震災当時から国会議員を続けている。復興を進めるには継続が必要」。2度の閣僚経験と3期18年の実績を強調した。
森は6年前の改選時、野党統一候補との事実上の一騎打ちを制し3選を果たした。地元・いわき市で7万7275票を獲得し、3万2530票差をつけた。陣営は前回を上回る得票を目標に掲げ、他候補を圧倒する「勝ちパターン」の再現を狙う。
陣営の屋台骨となるのは市議や県議だ。いわき市議会は保守系2会派が分裂し、2005(平成17)年の市長選から5度にわたり別々の候補者を推した。元衆院議員坂本剛二の死去と元復興相吉野正芳の引退を経て、9月の市長選では24年ぶりに候補者一本化を進める。6日に開かれた市長選立候補予定者の事務所開きでは一緒に気勢を上げ、「雪解け」を強調した。
陣営の「壁」が取り払われたことで「円滑に回っている」(陣営幹部)。市議らで構成する「キャラバン隊」には両会派が名を連ね、票固めに協力し合っている。浜通りでの訴えの中心は当然、震災と原発事故からの復興だ。森は3月の参院予算委員会で復興予算の確保を明言する首相答弁を石破茂から引き出したとアピールする。
ただ、ある自民系市議は市内で「顔が見えない地元候補だ」と森をなじる声を聞いた。復興が思うように進まない現状への鬱憤[うっぷん]がたまっているとも感じたという。政治資金収支報告書への不記載問題が重なり、古くからの支援者は「もう応援できない」と参政党支持に回った。陣営は相双地方を含め支援者らに電話などで攻勢をかける。南相馬市のある建設業関係者は「危機感だけは伝わってきた」と鼻で笑った。
4区総合選対幹事長の県議鈴木智は「本人と接点が多い浜通りで、しっかりとした票差で勝ち切らなければならない」と拳を握る。







石原は11日、浜通りを重点的に回った。飯舘村での街頭演説で「被災地の復興はまだまだ。復興に力を尽くす」と訴えた。南相馬市での演説では、貧富の差の広がりなど政権与党の無策ぶりを批判した。
陣営の拠点の一つは、いわき市にある立民の衆院議員斎藤裕喜の事務所。斎藤は昨秋の衆院選本県4区で惜敗したものの、比例東北で復活当選した。斎藤が市内で得た4万7363票を上回るのが陣営の目標だ。森に食らい付き勝機をうかがう。
2017年の衆院選で吉田泉が落選して以降、いわき市と双葉郡を地盤とする旧民主系国会議員は長らく不在だった。震災と原発事故からの復興の加速化に向け、国に直接働きかける地元選出国会議員の誕生が立民にとっての悲願だった。各種選挙の差配も担う。「国会議員がいるのといないのとでは、浸透力も説得力も天と地の差だ」と地元県議は言う。
斎藤は立民と国民民主、社民の各党県連、連合福島、県議会会派「県民連合」でつくる5者協議会を母体に野党系地方議員の陣頭指揮を執る。石原陣営は、森が復興に果たした役割を強調するのに対抗し、産業再生の遅れや除染土壌の県外最終処分の不透明さなどが復興の足かせになっていると課題を指摘。政府対応が不十分と批判を強める戦略だ。
支持基盤である連合福島傘下の一部労組からは、共産党との距離感を巡り不満の声が漏れる。陣営関係者は「共産が選挙区で候補者を降ろしたことで、(石原に)入る票が大きいのは確か。ただ、離れる票が読めない」と表情は晴れない。震災と原発事故発生時、衆院議員だった石原は相馬地方も選挙区としていたが、「支持者からは『県北の人だろ』『あまり印象に残っていない』との声が聞こえてくる」と頭を抱える。
4区選対事務局長のいわき市議坂本稔は「相手も浜通りが『天王山』と感じているだろう。どれだけ肉薄できるかだ」と意気込む。








参政党の新人大山里幸子(51)は11日、いわき市で個人演説会を開き、立候補のきっかけや参政党を支持する理由を力説した。
政治団体「NHK党」の新人越智寛之(51)、無所属の新人遠藤雄大(40)も支持を訴えている。■福島県選挙区立候補者(届け出順敬称略)大山里幸子[おおやまりさこ]
51
参政新越智寛之[おちひろゆき]
51
諸派新森雅子[もりまさこ]
60
自民現石原洋三郎[いしはらようざぶろう]
52
立民新遠藤雄大[えんどうゆうだい]
40
無所属新