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福島民報社が20日投開票の参院選に合わせて10~20代の福島県内有権者100人に行ったアンケートで、福島県の発展のために求める取り組みは人口減少対策が最多だった。子育て支援策の充実と産業振興が僅差で続いた。3年前の前回参院選時の調査とほぼ同じ傾向となった。この間、国は各種施策を打ち出してきたが、若年層は依然として課題が改善していないと感じているとみられる。古里衰退を懸念している実態が浮かんだ。■子育て支援、産業振興も
福島県の発展のため政治に最も取り組んでほしい事項の回答結果は【グラフ(1)】の通り。「人口減少対策」が20人、「子育て支援策の充実」が19人、「農林水産業、製造業、観光業など産業全般の振興」が18人だった。一部の選択項目が異なるため単純比較はできないが、2022(令和4)年の前回参院選時に福島民報社が行った10~20代の100人アンケートでも、人口減少対策は最多。産業全般の振興、子育て支援策の充実が続いた。
県は毎年、人口減対策に予算を重点配分し、若者のUターンを促す取り組みなどの対策を講じてきた。国は2023年4月にこども家庭庁を新設し「異次元の少子化対策」を進めてきたが、目立った成果は上がっていない。総務省によると、昨年10月1日時点の国内推計人口は前年同期と比べ、過去最大となる89万人の減少。県内人口の減少率は全国ワースト7位の1・35%だった。県内の合計特殊出生率は過去最低の更新が続き、昨年は県総合計画に掲げた同年目標値の1・61を下回る1・15となった。
「人口減少対策」を選んだ南相馬市の20代前半団体職員女性は「進学を機に地元を離れ、そのまま就職する人が多い」と若者が流出し、戻らない状況を不安視する。伊達市の10代男子高校生は近隣に廃校が増えている現状を記し、伝統文化や農業の後継者減少による地域の活力低下を憂えた。
「子育て支援策の充実」を選択した楢葉町の20代前半会社員女性は、課題を踏まえた改善を求める。「親が苦労していたことを知っている」とし、子育て世代が利用を希望するような施策を望んでいる。
二本松市の20代後半会社員男性は「周りで子どもを施設に預けられない人が数人いる」と訴え、不安の解消を要望。若者の移住につながるなどとし、子育て環境の充実を期待する意見が複数あった。
昨年度の県内企業の倒産件数は過去15年で最多となり、地域を支える中小・零細企業が苦境に立たされている。会津若松市の20代前半男子大学生は「経済が生活の豊かさの基盤だ」と指摘し、産業振興策を求めた。■最優先は経済対策
日本の政治
日本の政治が最も優先的に取り組むべき事項を聞いた結果は【グラフ(2)】の通り。「物価対策を含む経済対策」が50人で最多となり、他と比べて突出して多かった。
経済対策は参院選の争点の一つとして各政党・政治団体が論戦を繰り広げており、若い世代も生活に直結する問題として切実に捉えている傾向が明らかになった。■「投票行く」8割超
今回の参院選で投票に行くかを尋ねた。「必ず行く」と「おそらく行く」が各41人で8割を超え、関心の高さがうかがえた。
理由は「若い世代の声を政治に反映してほしい」が42人で最多。投票で最も重視する基準は「候補者や政党・政治団体が訴えている政策や主義・主張」が50人で6割を占めた。
投票に「行かない」と「おそらく行かない」は計11人だった。■オンライン投票求める声目立つ
若者の投票率の低迷が全国的な課題となっている。投票率向上への提案を自由記述式で聞いたところ、オンライン投票、交流サイト(SNS)での情報発信を求める声が目立った。
マイナンバーの活用、高い発信力を持つ「インフルエンサー」との協力を記した人もいた。投票場所に工夫を求める声も。「自宅やコンビニ」(本宮市の20代後半会社員女性)、「会社や学校」(南相馬市の20代前半会社員男性)などが挙がった。
県内の10・20代の参院選投票率は選挙権年齢が18歳に引き下げられた2016(平成28)年以降、30代以上に比べ、低い傾向が続いている。■調査方法
県内の高校、大学、専門学校などに通う生徒・学生、社会人ら選挙権を持つ18~29歳の100人に7月3日から11日にかけて実施した。内訳は10代(18、19歳)が20人、20代前半(20~24歳)と20代後半(25~29歳)が各40人。地域バランスや男女比を考慮して学校や企業、団体に回答者の選定を依頼するなどし、オンライン上の専用フォームから回答を得た。