福島のニュース
環境省や福島県などは15日、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に、国内有数のコハクチョウ飛来地である猪苗代湖が同日付で新たに登録されたと発表した。国内の登録湿地は54カ所目。県内では2005(平成17)年に登録された尾瀬に続き2カ所目となる。国際的に貴重な自然環境としての認証を受け、国内外での知名度向上、環境教育や研究の推進、保全に向けた意識醸成などの効果が期待できる。県と関係自治体は連携し、保全やPR活動に一層力を入れる。
15日付で官報と条約事務局(スイス)の登録簿に掲載された。環境省や県などによると、登録地は猪苗代湖と、周辺の一部に当たる会津若松市の陸地計1万960ヘクタールとなる。湖の面積が広く冬でも全面凍結しないため、コハクチョウやカモ類の重要な越冬地となっている上、近年は平均約800羽のコハクチョウが飛来している。湖と周辺では197種の動物の生息が確認されており、中には国際自然保護連合(IUCN)が定める絶滅危惧種も含まれる。
登録に当たり必要な(1)国際基準に該当(2)国の法律による将来にわたる自然環境の保全(3)地元住民らからの賛意―の三つを満たした。湖はコハクチョウの飛来数などで基準を満たす他、磐梯朝日国立公園内にあり、自然公園法で保全が図られている。会津若松、郡山、猪苗代の3市町が地元関係者から賛成の意見も得た。
登録による新たな規制などはないが、関係機関などが連携し、条約が掲げる三つの柱の推進を目指す。「保全・再生」に当たる住民や利用者の美化意識の向上、「賢明な利用」として保全と経済活動の両立、環境教育などの場として活用する「交流・学習」の取り組みの充実が図られる見通しだ。県や3市町は連携し、登録後に動画やグッズの作成、新たな出前講座の開設などを予定している。猪苗代湖周辺のイベントなどの機会や交流サイト(SNS)を活用し、世界的に貴重な自然環境や魅力などの情報を広く発信する方針だ。
3市町などでつくる「猪苗代湖環境保全推進連絡会」として申請。アフリカ・ジンバブエで開かれる条約第15回締結国会議(COP15)で、26日に県と3市町の関係自治体の代表者に登録認定証が授与される予定だ。■地域活性に期待
県と3市町首長
猪苗代湖のラムサール条約への登録を受け、県と3市町の首長は環境保全の意識向上や地域活性化に期待を寄せた。内堀雅雄知事は「福島県にとってかけがえのない財産である猪苗代湖の美しさ、豊かさを未来にしっかり引き継いでいく」と誓った。
椎根健雄郡山市長は「猪苗代湖が『人と自然が共に生きる象徴』として輝き続けるように守りたい」と強調した。室井照平会津若松市長は「地域住民や関係者と猪苗代湖の価値を再認識し、保全や利活用の推進につなげたい」とコメントした。二瓶盛一猪苗代町長は「環境保全・観光の両面から、猪苗代湖と共生を図っていく」とした。※ラムサール条約
1971(昭和46)年にイランのラムサールで開かれた国際会議で採択された条約。正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。条約に基づき、各国が重要な湿地を登録する。条約は各国に対し(1)保全・再生(2)賢明な利用(3)交流・学習―を求めている。