能登の心宿す音色よ全国へ がれきで風鈴制作 福島県矢吹町出身の伊藤さん 巡回プロジェクト 18日猪苗代から

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能登の心宿す音色よ全国へ がれきで風鈴制作 福島県矢吹町出身の伊藤さん 巡回プロジェクト 18日猪苗代から

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能登半島地震のがれきが風鈴へと生まれ変わり、国内各地に被災地を思う響きを届ける―。災害被災地を支援する団体の代表で、福島県矢吹町出身の伊藤拓海さん(25)=石川県小松市=らによる風鈴巡回プロジェクトが18日、猪苗代町から始まる。東日本大震災で被災した福島を出発点に、能登や大阪、東京を巡る。被災の記憶を宿す風鈴に触れる機会をつくることで「多くの人が被災地について考えるきっかけとしたい」と願う。
チリン、チリン…。猪苗代町沼尻の山中に飾られた風鈴が、高原の風に揺れる。17日、翌日から始まる音楽フェス「rural」での展示に向け、伊藤さんは設営作業に追われた。会場の一画に出展し、主役の風鈴約10点の展示に加え、土や木から抽出した香りも漂わせ、被災地に寄り添う祈りの空間を演出する。
伊藤さんは自ら設立した被災地支援団体「ビートフィックエクスペリメント」の代表を務め、現在の活動場所とする能登半島で地震被害からの復興支援に取り組んでいる。被災地支援に当たる人々に若者が少ないと感じ、災害が過去の出来事として風化していくことを深刻に受け止めた。「各地の風で被災地の音が鳴れば、全国と被災地がつながる」と発案。今回の支援プロジェクトの主役に風鈴を選んだ。
風鈴はがれきや海岸で集めた流木でできており、全て一点物。福島、石川両県の大工など地域の職人らが手がけた。受注生産での購入も可能で、益金は今後の被災地のための活動資金に充てる。
伊藤さんの活動の原動力は「お互いさま」の精神だ。矢吹町の中畑小4年の時、震災で長期間の断水などの被害に見舞われた。物資を届けてくれたのは阪神大震災の被災者だった。「お互いさまだからね」の言葉とともに、支えてくれた温かさが心に残り、いつかは支援する側に回りたいという思いを抱いてきた。
明治大在学中に大堀相馬焼の窯元でインターンを経験し、伝統文化やアートと被災地支援を結び付ける現在の活動につながった。能登半島地震と記録的豪雨をきっかけに、「今度は自分が支援する番だ」と石川への移住を決意。能登を応援するアートと食のイベントなどを展開してきた。ミュージシャン、デザイナー、料理人など多彩な人々による協力の輪が広がっている。
能登への関心が薄れていると感じる中、災害を「現在進行形」として捉え直してもらうことが活動の軸だ。アートや音楽などの親しみやすい表現方法で、今後も大勢が被災地へ思いを寄せる機会をつくろうと考えを巡らせる。「お互いさまの精神を広め、優しく助け合う社会をつくっていく」。古里で思いが詰まった風鈴を手に、互助の心が広がるよう願った。