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福島市渡利地区(当時信夫郡渡利村)に落とされた模擬原爆の破片が8月、長崎県で一般公開されることになった。太平洋戦争の終戦間際に米軍が原爆投下訓練のため全国に投下した模擬原爆は福島県など18都府県で計49発に及び、400人以上が犠牲になったとされる。原爆被害から80年を迎える長崎の地で、福島に残された資料が模擬原爆の実態を伝える。
破片は8月17日に長崎県の五島市立図書館で開かれる平和イベントの会場の一画で全国各地から協力を得た戦争に関する資料とともに展示される。その後、地域の中学校で平和について考える授業などで紹介する計画という。企画した五島市地域おこし協力隊員で被爆2世の野田隆喜さん(67)=福岡県飯塚市出身=は模擬原爆がもたらした被害の悲惨さなどを伝えようと福島市や破片が保管されている瑞龍寺に貸し出しを依頼した。「長崎でも模擬原爆の存在を知る人は少ない。多くの人に知ってもらうきっかけにしたい」と話した。
模擬原爆は、広島と長崎への原爆投下を実行した米軍第509混成群団が1945(昭和20)年7月20日から8月14日にかけ、日本全土に放った。重さ約4・5トンで通常の爆薬が詰められており、「ファットマン」と呼ばれた長崎のプルトニウム型原爆に似た形から「パンプキン(カボチャ)爆弾」と呼ばれた。原爆投下を成功させるため、用意周到な計画の下で行われた予行演習とされている。