福島県内除染土、首相官邸に 県外最終処分、理解醸成へ 大規模利用めど立たず

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福島県内除染土、首相官邸に 県外最終処分、理解醸成へ 大規模利用めど立たず

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環境省は19日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で発生し、中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)で保管してきた土のごく一部、約2立方メートルを再利用するため、東京・永田町の首相官邸の前庭に運び込んだ。法律で約束する県外での最終処分の実現に向け国民の理解醸成が狙い。公共事業などでの大規模利用を目指すが、受け入れ先が見つかるかどうかは不透明だ。
県内での実証事業を除き再利用は初めて。中間貯蔵施設には除染で出た土や廃棄物約1410万立方メートルが搬入されている。除染土の再利用は新宿御苑など首都圏3カ所での実証事業が計画されたが、住民の反対で頓挫している。
環境省によると、官邸前庭の一角で放射性物質濃度が低い除染土を約60センチの高さに積み、普通の土をかぶせた上で表面に園芸用の草タマリュウを植える。工事は20日に完了する予定で、放射線量を定期的に測定して同省ホームページなどで公表する。22日には林芳正官房長官や浅尾慶一郎環境相らが前庭を視察する。
中間貯蔵施設の除染土や廃棄物は、搬入開始から30年となる2045年3月までに県外で最終処分すると法律に明記している。国は処分量を減らして受け入れ先を見つけようと、放射性物質濃度が比較的低い土を公共工事などで使う方針。ロードマップ(工程表)を策定し、処分場候補地選定の条件を具体化させる。■中間貯蔵施設を午前4時ごろ出発
除染土約2立方メートルを乗せたトラックは19日午前4時ごろに中間貯蔵施設を出発した。大熊町側の帰還困難区域のゲートを通過して、常磐自動車道大熊インターチェンジから首相官邸へ向かい、午前9時20分ごろ官邸に到着した。
除染土は中間貯蔵施設内の道路盛り土実証事業で使われた土壌の余り。環境省によると、放射性セシウム濃度は1キロ当たり6400ベクレルで、再生利用基準の8千ベクレルを下回っている。小袋260袋に小分けし、トラックに積み込む作業を18日までに終えていた。■県外最終処分へ前進と受け止め
大熊、双葉両町長
中間貯蔵施設が立地する大熊、双葉両町長は、除染土の県外最終処分に向けた前進と受け止めるコメントを発表した。国に対して国民の理解醸成と再生利用の推進につなげるよう求めている。
吉田淳大熊町長は「県外最終処分に国民の理解醸成は欠かせない。官邸前庭と限定された場所ではあるが、政府が率先して事例を示すことで取り組みの加速化を期待したい」とし、伊沢史朗双葉町長は「政府が先行事例をつくることは一定の前進。2045年3月までの県外最終処分の実現には、今回の事例を実用途での再生利用へ波及できるかが鍵」とコメントした。県と連携し、国に対して計画的で着実な取り組みを求める考えを示した。※除染土の再利用
東京電力福島第1原発事故後、飛散した放射性物質を取り除く県内の除染で出た土や廃棄物は、第1原発周辺の中間貯蔵施設で一時保管している。これまでの搬入量は東京ドーム約11杯分に上る。国は最終処分量を減らして県外で受け入れてもらおうと、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8千ベクレル以下の土を公共事業などで再利用する方針。こうした土は全体の4分の3を占める。南相馬市で盛り土を、飯舘村で農地を造成する実証試験を実施した。